472:名無しNIPPER[saga]
2015/08/18(火) 23:36:19.20 ID:2OP6sQVDO
怪我自体は重いものではなかった。軽い打撲だけで、裂傷や出血などは確認できない。カレンは消毒をしてから、患部をアイスノンで冷やす。
「慣れてるな」
「そう? 普通はこれくらい出来ると思うけど。……痛む?」
「それなりに。だが、正常な痛みだ。骨や内臓に影響はないようだから、二日三日で完治するだろう」
彼は他人事のように言った。充分に冷やした後、湿布を貼って包帯を巻く。処置が終わっても、カレンはライの近くから離れなかった。その背中にそっと触れる。
確かな体温。確かな鼓動。確かな距離。とても安心する。
「……ライ」
彼に言わなくてはならない事がある。しかし、その言葉を口にするには結構な勇気を必要とした。
「どうした」
「……ごめんね。巻き込んじゃって」
「気にしなくていい。君について行ったのは僕の意志だ」
いつも通りの様子に、思わず笑みが零れる。救われたような気がした。
「そ、そっか。……それと、その」
「ん……?」
「守ってくれて……ありがと」
先ほどよりも勇気を込めて言った。ライの肩が僅かに揺れる。もしかしたら、笑ったのかもしれない。
「いや。……君が無事で良かった」
幾分か柔らかくなった言葉が風に乗り、赤く染まった保健室のカーテンを揺らした。
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