594: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/20(日) 00:27:13.04 ID:a5KsSFBDO
「────!」
ライは目を覚ますと同時に飛び起きた。覚醒した瞬間には夢だという事に気づいていたので、驚きはなかった。ただ、体中が汗でびっしょりだった。
「なんだったんだ……」
強烈な内容だったのは確かだ。手には人を切り裂く感触が残っている。鼻には死臭が、耳には断末魔が、それぞれ染み付いて離れなかった。
だが、それだけだ。今し方みたばかりなのに、夢の内容を思い出せない。起きた時には残っていたイメージも、何か強烈な力によって塗りつぶされようとしている。後はいつも通り、残滓に苦しめられるだけだ。
ライは頭を抑える。シンジュクゲットーでの一件から一日経過した朝の三時。悪夢によって起こされたらしい。
なんだったのか。決まっている。あれは過去に関するものだろう。蔓延する敵意と悪意と殺意。這い寄ってくる死の感触。どれもシンジュクゲットーで接したものと同じだ。
スザクの職場で使用したシミュレーターは高性能だったが、絶対に再現出来ないものがある。あの地獄の空気だけは、再現出来るはずがないのだ。
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