6:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 23:29:49.64 ID:YUY/Ua/DO
「────」
「────」
二人分の話し声。とっさに身を隠す。敷地内は景観を重視しているのか、木々が豊富だった。話し声が近づいてくる。
木の影から辺りの様子を窺う。一組の男女が近づいてくるのが見えた。どちらもこちらに気がついている様子は無い。
一人は黒い髪に黒い服を着た、端正な容姿の少年だった。もう一人はウェーブの掛かった長い金髪に、クリーム色の服を着た美しい女性だ。見た感じ、女性の方が年上に思えた。
二人は談笑しながら廊下を歩いてくる。女性の方が少年をからかい、少年は肩を竦めながら皮肉を返す。二人の間には特有の気安さがあり、親しい関係である事が窺えた。
目を細める。
(……どうしてだろう)
不思議に思った。彼らは単に取り留めの会話をしているだけなのに、それがどうしようも無く眩しい。
気がつけば、右足が前に出ていた。落ちていた小枝を踏んでしまい、折れる音が静かな中庭に響いた。
「──誰だっ!?」
少年は一瞬にして表情を険しく変え、こちらを威嚇してくる。女性の方は突然の事に驚いたようで、形の良い目を丸くしていた。
それを見て、何かが切れたかのように意識が遠のいていく。一気に疲労が込み上げて、気がつけば地面が目前に迫っていた。
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