776: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/10/24(土) 06:42:49.26 ID:QEKfXJJDO
「お前は記憶が無いのに、考え方はしっかりしているんだな」
「そうだろうか」
「盤を挟めば分かることもある。チェスはそういうゲームだ。筋道を立てた思考。徹底したリスク管理。相手の動きを読み取る洞察力。そして何より判断力。それらが無くては勝つことは出来ない」
ライは居心地が悪そうに身じろぎした。先の対局で勝利出来たのはルルーシュが手を抜いていたからに過ぎない。それなのにこうしてほめちぎられると、彼の普段のキャラクターと相まって、非常に気味が悪かった。
カレンもそうだが、目の前の少年も、いつもとは様子が違うような気がしてならない。何かを選定し、評価を下す時のような静かな傲慢さが見え隠れしている。
「らしくない話をしたな。時間にはまだ余裕がある」
時刻はまだ二三時前だ。ルルーシュは整然と並べられた駒の一つ──黒のキングを手に取った。
「僕は構わないが、君はまた居眠りをする気だろう。シャーリーに怒られるぞ」
先攻のライは白いナイトを動かしてから言った。よく磨き上げられた木製の駒が、プラスチック製の盤にコツリと置かれる。
「バレないようにすれば良い。お前にも今度、秘訣を教えてやろう」
「真っ当な努力をするつもりはないんだな」
ルルーシュは答えず、返答の代わりにキングの駒を置いてきた。
ライは頭を振った。
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