59: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/16(火) 22:21:27.34 ID:9WL6O8ki0
そのまま空いている手で受け取った。
思わずどういうことだ?と怪訝な顔をしていると身振り手振り付きで一色から補足が入る。
「さっき渡したのはクラスの便利な……あっ、お世話になってる男子に渡す用なんですよー」
「あ……そうなの」
テヘペロッ☆とまたまた悪びれなく言い放った。
いやだから言い直さなくていいから。むしろ言っちゃってるし便利って。
せっかく最近いろはすに感心してたのに、これは評価を改めなくてはいけないかもしれませんね……。
台無しだよ!
「あ、あとですね先輩。さっきは思わず許可しちゃったんですけど……。出来ればわたしがいないところで
今度は開封してほしいかなー?って思いまして」
「? わかった」
簡潔に了解という旨を伝えると、一色は小さく礼を述べる。
その時予令が鳴った。登校までの猶予はあと僅かだと教えてくれる。
「名残惜しいですが遅刻しちゃうのでそろそろ行きますね。わたし下駄箱こっちなので」
1年生用の下駄箱を指さして言う。俺もそれに呼応するように言葉を返した。
「ああ。あとな一色」
「はい?」
はて?というか、ぽかんとした表情をして俺の言葉を待っている。
こんな事を言うのは無粋かもしれない。
ただの自己満足かもしれないけれど、それでも言っておきたかった。
勇気ある彼女に、臆病な俺なりのエールを。
「……頑張れよ」
「……はい!」
一体何に対しての言葉なのか。そのあまりに短いエールは無事一色に伝わったのか、大きくうなずき今度こそ
背を向けて歩いて行く。
太陽を受けた背中が、とても眩しく見えた
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