90: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:30:23.26 ID:bJtf1eDj0
冬の夜道を行く。
自転車が小さな段差を越えるたび、それに合わせて鞄が跳ねる。
鞄の中には、渡す人それぞれの想いを込められた贈り物が詰まっている。
バレンタインの形は様々だ。
友チョコ、義理チョコ、はたまた逆チョコ、なんでもござれ状態である。
それは細かく枝分かれした木を想像させる。
枝分かれの数だけ、人への想いがある。
ではその幹は?枝葉が存在するのは根幹があるからだ。
バレンタインの根幹にあるのは、やはり……好意、だろうか。
今日彼女らが何を込めたのか、それを知る由はない。
人の気持ちなんて、他人がどれだけ考えたって正確に理解できるものじゃない。
それは自分が一番良くわかっている。
もしも、仮の話だ。
知ってしまったら?
俺はその時逃げ出さずにいられるだろうか?
逃げるなよと、そうどこかから聞こえた気がした。
かつて彼の背中に掛けた言葉が、自らを苛む。
逃げずに立ち向かうには勇気が必要だ。でも背中を見せて逃げるのは、もっと勇気がいるんじゃないか?
だったら、俺の答えは一体何なんだろうか。
未来を憂いても、過去を悔やんでも、結局何がわかるわけでもないし、何も変わらない。
だったら、今は少しくらい浸っていたいと思った。
このぬるま湯のような、幸せな気分に。
<了>
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