6: ◆8HmEy52dzA[sage saga]
2015/06/18(木) 23:26:26.07 ID:jPdfGr6q0
「はざーっス」
「うぃース」
出勤して来たのであろう、二人の男の子が姿を現わす。
「紅井朱雀、出陣!」
「おはようございます」
「おはようさん。声がでけぇよ、紅井」
「仕方ねぇだろ、地声なんだからよォ!」
「うるせえっつってんだろーが!」
後にそのユニット名を知る、紅井朱雀と黒野玄武の神速一魂の初印象は、デコボコなコンビだな、というものだった。
なんせ頭に可愛い猫を乗っけた(なんで?)、ツンツンの攻撃的な髪型をしたステレオタイプのヤンキーに、オールバックに眼鏡のインテリ系ヤンキーだ。
それに何よりも二人並んだその様は、頭一つほどの身長差があったのも理由のひとつだった。
けれどそれは片方が大きすぎるからであって、決して片方が小さい訳ではなかった。
後に聞いた黒野くんの身長はなんと190センチ。
あたしは160センチだから、実に30センチの差だ。
まるで大人と子供。あたしも男にしては小さい方だけど、こんなに誰かを見上げることはそうはない。
「で、でっか……」
「……?」
だから、思わず声に出てしまった。
その呟きを聞きつけ、黒野くんの視線がこちらに向く。
やばい。外見は大人しそうに見えても額の傷と言い、相方の紅井くんと言い、その本質はいわゆる不良だ。
ひょっとしたら、彼の機嫌を損ねてしまったのかも――。
どうしよう、絡まれたらどうやって返せばいいんだろう。
と、そんな取り留めもない思考を混乱しながら頭の中でくるくると回していると、黒野くんが口を開く。
「惚れた」
「……は?」
その発した言葉は、あたしの予想の範疇を遥かに超えていて。
「人生は一期一会……一目惚れだ。無作法で悪いが、俺は恋愛関係は全く無縁だ。正直に言うしか方法を知らねえ」
今思えば最大の過ちは、この場であたしが男だとちゃんと言わなかったことだ。
何処かに失敗があって、それが分水嶺だと仮定するのならば、それこそがそうだったのだろう。
「俺は黒野玄武。お前は?」
「み、水嶋……咲」
「咲……余韻嫋々、雅やかで良い名前だ」
でも、言い訳じゃないけど、あたしが一方的に悪いと決めつけては欲しくない。
何故なら黒野くんの迫力と真摯さに戸惑い、あたしだけじゃなく、ジュピターの皆さんや相方の紅井くんがフリーズして動けなかったのも、また事実だったのだから。
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