27:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:23:49.48 ID:BVZ5thB50
俺は首を横に振る。嘘ではない。その日は親父が家にいて何人か来客があるらしい。
そんな環境で宴など、とても落ち着かない。
「部員の家じゃなくてもいいだろう。どっかのカフェか茶店か」
28:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:25:04.57 ID:BVZ5thB50
「じゃあどなたか良い喫茶店かカフェを知っている人は?」
千反田の問いに一本だけ腕が上がった。全員がいずるを注視する。
「あたしにまかして下さい」
29:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:26:48.84 ID:BVZ5thB50
宵っ張りなたちなのだが、めずらしく昨夜は早寝した。
8時前にはベッドから這い出た。と言っても寝ざめは良くない。
いつもの土曜の朝ならまだ夢の中にいる時間帯だ。休日の早起きに体は慣れていないのだ。
30:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:27:58.68 ID:BVZ5thB50
俺が三年にあがって変わったことといえば携帯電話を持つようになったことだ。
俺だけじゃない。千反田も今では持っているし、いずるの場合入学前から所有済みだ。
テレビでも観ようかとリモコンを手にとった時、間の悪いことに手中にある黄緑の携帯が震えだす。
31:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:33:42.79 ID:BVZ5thB50
「伝えたいことがありまして」
いずるの深刻そうな物言いに俺は身構えてしまう。
春先にあった呼び名の件や里志との軽口を交えた会話を聞いていて
32:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:34:44.48 ID:BVZ5thB50
12時には家を出て待ち合わせ場所へと向かう。
パーティーと言っても昼飯を兼ねて軽く、というコンセプトで
1時半には解散する手筈になっていた。さっさと始め手短にすませるという非常に俺好みのスケジュールだ。
33:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:35:26.06 ID:BVZ5thB50
やがて会場に指定されたカラオケボックスが見えてくる。黄色に塗られた外壁。
取り付けられた看板はひたすらにデカくそのせいか、他の建物よりもひときわ存在感があった。
一旦の集合場所であるカラオケボックス前にいたのは、いずる一人だ。
34:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:36:07.55 ID:BVZ5thB50
今日は肌寒く、冷たい微風が吹いていた。
けれどいずるは身震い一つせず壁に寄りかかっていっている。
水玉模様のパーカーにジーンズという出で立ち。冬の装いをしているが
35:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:37:00.43 ID:BVZ5thB50
「まさかカラオケボックスとはな」
いずると横並びになる形で壁にもたれる。
ふざけ合っている女子大生風のグループが俺の傍らの階段を上がっていった。
36:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:37:51.53 ID:BVZ5thB50
三年生組はカラオケとはずいぶんご無沙汰らしい。
その中で俺のことを詳しく言うとすれば、カラオケはあまり好きじゃない。
というより音楽をあまり嗜んでおらず、流行の曲でさえも歌詞はうろ覚えというありさまだ。
37:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 11:39:09.05 ID:BVZ5thB50
「千反田先輩、お別れとかそういうの嫌がりそうじゃないですか」
いずるの言葉で閉じ込めていた疑問が湧いてくる。
「まあ多分、な」
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