過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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792:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 12:57:51.05 ID:eNgRSOWAO
先輩は言われた通りに黙って目を閉じて立っている。えぇー……なんか、無防備だなぁ。根はスゴい素直なのかな。
「まだか?」
いけない、早く済ませちゃおう。
793:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 12:58:36.35 ID:eNgRSOWAO
泡を食ったように狼狽えた先輩は、自分の唇の辺りで手をわさわさと動かしている。
「見てわかりませんか?わたしの指です」
わたしは人差し指を突き出して腕を伸ばしたままだ。
794:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 12:59:30.88 ID:eNgRSOWAO
「そうです。だから、自信持っていいです。今の先輩は……素敵です。勘違いなんかしてません。ちゃんと、自分とだけじゃなくて、人の想いとも向き合ってあげてください」
ああ、言っちゃった。先輩は決まってて、人の想いと向き合っちゃったら、あとはもう。
「……そっか」
795:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:00:17.22 ID:eNgRSOWAO
あ、しまった。モロに言ってた……。あれを聞いてから、わたしは言おうともしていないことが口から出てばかりだ。
「あ。えーと……割と普通に漏れてました」
「マジかよ……。忘れてくれ、つっても……」
796:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:00:52.51 ID:eNgRSOWAO
「だよな。忘れろって言われても忘れられないことってあるもんな。でも恥ずかしいんだよ……」
「わかってます。さっきのはちょっと……つい、うっかり」
ほんとは葉山先輩も聞いてたんだけど、絶対に言わないほうがよさそうだ。先輩が恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。
797:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:01:59.71 ID:eNgRSOWAO
葉山先輩と同じような気遣いの台詞が返ってきて、少し複雑な気持ちになった。やっぱり二人は似た者同士で、通じあってるんじゃないですかねー。
「またな」
先輩はポケットに手を突っ込んで歩き始める。離れていく背中を見ていると、もう一つだけ伝えたくなった。
798:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:02:52.40 ID:eNgRSOWAO
やれるだけとかじゃなくて、絶対って言って欲しかったな。やれるだけやっても、それで壊れちゃったらどうしてくれるんですか。責任とってくれるんですか?
そう言いたくなったけど抑えておいて、すぐにまた会うことになる先輩に別れを告げた。
わたしの大切なものなんだから、先輩だけの責任にしてちゃダメだよね。
799:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:03:36.78 ID:eNgRSOWAO
生徒会だけじゃなくて、先輩の頭の片隅にでもわたしの居場所があるといいな。
わたしらしくない、慎ましくてささやかな願いを消えかけた太陽に向けてみる。
けどやっぱり、葉山先輩にも先輩にも、わたしの入れる隙間はないんだということを改めて自覚すると、さすがに悲しくなってきた。
800:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:04:19.48 ID:eNgRSOWAO
おもわず溜め息と愚痴が漏れてしまった。まぁいっか、今は一人だし。
手すりにもたれ掛かり下を向くと、右目から一滴だけ涙が零れ落ちた。
あれ、さっきは涙なんか出なかったのに。
801:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/02(金) 13:04:59.25 ID:eNgRSOWAO
どうせあの三人はわたしと葉山先輩に気を使わせないようにとかって、いつも通りでいようとするに違いない。ならわたしもできる限りいつも通りでいられるようにしないと。
自分の大事な場所を守るのに人に任せっきりでいいわけないんだから、自分でもちゃんとやれることをやらないとね。
「うぅ、さむさむっ!」
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