430: ◆jSMhOnCsDM[saga]
2015/09/08(火) 23:36:16.09 ID:fb6BAXWP0
『同点延長十回の表、ワンナウトランナー三塁』
『両チーム共に得点はなく0対0、いまだこの均衡は破られていません』
『今日の過去4打席はいずれも外野フライ。ここでも打てれば、それは値千金となります』
『右のバッターボックスはトップに戻り────』
暇だ。あれば面倒なのに、書類がないと拍子抜けする。絶妙なバランスが必要だと思う。と言って、そのためだけに出撃させるというのも面倒だった。なにより彼女たちに申し訳ない。
着任時に持ち込んだラジオを久しぶりにつけると、感心なことに健在で、電波もぴったりというおまけ付き。少々雑音は混じるものの気にならなかった。
『ここ最近の調子は上向きであり、今日の外野フライもいいところまでは飛ばしていますが、マウンド上は守護神────』
『150km中盤の速球を武器に力でねじ伏せてきます、そう上手くは打たせてもらえないでしょう』
『内野は前進守備、外野も前。守る側とすれば一点も許さない場面です』
『ピッチャー、セットに入って足が上がる。第一球を……投げ降ろした!』
暇だ。戦争が終わったというのにそんな気がしない。もう一度、例の書類に目を通した。
『真ん中外寄りボール。キャッチャーの構えよりやや内側に入ってきました』
『まずは様子見、ということでしょうか』
『目でランナーを牽制し、肩を大きく上下させてから、キャッチャーがマウンドへボールを返します』
本当によくできている。
この字は神通で間違いないだろう。実物を見てコピーしたかのように精巧にできている。もちろん、見たことなどない。彼女も見たことはないだろう。ずっと見ることがないのかもしれない。
だが艦娘の文字については毎日見ているのだ。それくらいの区別は、とうの昔につくようになっていた。神通は、ここでは一番美しい字を繰り出す。
つまりこれは夢。神通の、そしてここの艦娘の、戦後に関する夢だ。実に可愛らしい。
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