過去ログ - 奈緒「…この姿、凛にも見せてやりたいな」可蓮「あっ、りーんー!」
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13:名無しNIPPER[sage]
2015/07/07(火) 19:11:45.00 ID:cq31HMZB0
「では、失礼します…ん?凛じゃないか」

蝶のように甘い香りにつられ、すん、と花に顔を近づけたとき、不意にかけられた声はプロデューサーのものだった。顔をあげれば、扉の一つを開けながら、こちらに近づいてくる。通路やら舞台近くに居ないと思ったら、成る程、待機室にいたんだ。ライブの様子は、建物内のテレビならどこでも見ることができるから、利用していたんだろう。

「うん。朝ぶりだね、プロデューサー」

「おう、さっきは災難だったな。加蓮のヤツもよく見つけるもんだ。叱るのも含めて、後で楽屋に行こうと思うんだが、お前はどうする?」

「……私も一緒に行っていいかな?後、お手柔らかにね」

「ああ、構わん。……つーか、すまんな、俺がこちらに来ちまったから、仕事、お前一人に任せっきりで。今日は皆出払ってたから……」

「知ってる。別に、気にしてないよ。写真撮影よりはライブでしょ、普通」

そう。平気かどうかと聞かれたら、ちょっと言葉を飲み込むだけだ。ちょっと、歯切れ悪くなるだけだ。デビュー当初以来の、久し振りの一人での活動は中々に大変だった。仮にもデビューしてそれなりに経っている、だからこそ一人で、と任されたのに、悪い報告はしたくないし。そもそも、言うほどのヘマはしてないし…プロデューサーは黙った私に、口にはしてないけれど何か感ずいたのか疑り深い視線を向けるから、気まずくて私は話をそらす。

「それより……加蓮に何か言ったでしょ」

「ん?ああ、いや、別に、大したことは」

「言ったんだ」

「……自信なさげだったから、よく似合ってる、綺麗だ、もしアイドルでなかったら惚れてた、と……」

「何口説いてるのさ……」

……そりゃ、浮かれるに決まってる。しかもウェディングドレスの女の子にそんな台詞って。彼がやって来た方角が奈緒が指し示していたものと同じだと思ったら、案の定だ。ぽすぽす、と手のブーケで顔を叩くと、プロデューサーは顔を花粉まみれにしながら、勘弁してくれと情けない悲鳴をあげる。もう少し男らしくしたらどうなのかな。花屋らしさを捨てつつ思う。

「仕方ないだろ、どうするのが最善か分からなかったんだから……何にせよ、無事に成功だ、良かったよ。取り敢えずひと安心だ……」

「うん。二人とも楽しそうだった」

「そのブーケは奈緒からか?」

「本心でからかったら投げ付けられたよ」

「どういうことだよ」

プロデューサーは訳が分からないと呆れた顔をして、ふと、手をならした。

「ああそうだ、お前に会えたら一つ聞いておこうと思ってたんだ」

「何?」

「なあ凛、ブライダルの仕事に、興味はないか?」

「え、加蓮と奈緒とじゃ飽きたらず、私もって……トラプリ全員と結婚するつもり?プロデューサー、さすがの私も引くよ」

「ちげえわ。一夫多妻制は日本には無い…って待て待て、誰もガチのウエディングなんて言ってないぞ?あの二人もライブだから着てるんだからな?」

「分かってるよ」

「…焦るだろ」

「何で焦るのさ。へんなプロデューサー」

くす、と笑えば、プロデューサーは、お前、イイ性格になったなと溜め息を吐くが、楽しそうだからイヤじゃないんだと思う。イイ性格……昔は冗談なんて言うタイプじゃなかったから、誰の影響なんだろう。ああ、心当たりがありすぎて、困るくらいだ。



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