38:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:05:38.13 ID:d3Zd/SN00
――そう、それはまるで、自分には達成できなかった夢を子に押し付ける親のような行為だった。
押し付けられる側のことなんて考えていない、身勝手な言葉。
その言葉が相手にとってどれだけの意味を持つかわかっているはずだった私が言ってしまった、呪いの言葉だ。
39:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:06:17.70 ID:d3Zd/SN00
11
調べた結果、やはり桃子がああなったのは岡崎泰葉が原因らしいということがわかった。桃子と岡崎泰葉が話していたところを見たという話がいくつかあったのだ。
40:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:06:58.64 ID:d3Zd/SN00
12
モバP「周防桃子との仕事が決まった」
41:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:07:36.86 ID:d3Zd/SN00
泰葉(……違う)
Pさんの言っていたことは本当だろう。だが、そういう意味ではない。重要なことは、『これだけの早さで実行に移した』ということだ。これだけの早さで実行に移すことができたということ。もしも断られたら他の方法に、と言っている時点でその方法もあったということだ。他の方法も実行しようと思っていたということだ。
でも。
42:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:08:56.67 ID:d3Zd/SN00
13
桃子ちゃんは私のことを慕ってくれた。共演する機会はあまりなかったが、個人的な付き合いは続いていた。
普通に遊ぶ、といったことは少なかった。一緒にレッスンをしたり、演技の参考になりそうなものを教え合ったり。
43:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:09:32.00 ID:d3Zd/SN00
そこで、桃子ちゃんの色んな話を聞いた。桃子ちゃんがここまで頑張っている理由の一つを、聞いたりした。
桃子「桃子はいちばんになりたいの。誰にも、負けたくない。そうすれば……」
それから先の言葉を桃子ちゃんは言わなかったけれど、その後に続く言葉はそれまで桃子ちゃんと付き合っていればなんとなくわかった。
44:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:11:12.20 ID:d3Zd/SN00
私には桃子ちゃん以外にも後輩が居た。桃子ちゃんは違う事務所だったが、同じ事務所にも後輩は居たのだ。私を慕ってくれる――私に憧れて芸能界に入ったとまで言ってくれるような子も居た。中には桃子ちゃんよりも私に年齢が近い、同年代のような子まで居た。
その子たちとも仲良くできていたと思う。
でも、彼女たちは桃子ちゃんとは違った。
向上心がなかったわけじゃない。努力していなかったわけでもない。
45:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:12:38.79 ID:d3Zd/SN00
その頃からだろうか。事務所内で、私と同年代の子たちが私の陰口を言うようになった。
いや、正確には陰口ではないのだろう。『泰葉ちゃんは何か悪いことをやっているんだ』『偉い人に気に入られているだけだ』なんて、そんな陰口はほとんど言われなかった。
演技力の差は明らかだったから、そんな陰口はなかなか言うことができなかったのだろう。
なら、彼女たちは何を言っていたのか。
……一言で言うならば、彼女たちは私のことを褒めていたのだ。
46:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:13:06.62 ID:d3Zd/SN00
それでも、私は仕事を続けた。楽しかったかどうかはわからない。仕事自体は楽しかったと思う。でも、仕事をやっている間に色々なことを考えて……それは、楽しくなかった。
そんな日々が続いた。もうほとんど何も考えてはいなかった。大人の言うことを聞くだけの日々だった。レッスンを怠ったりすることはなかった。負けるわけにはいかないと思っていたから。彼女たちの代わりに勝ち残った私が負けるわけにはいかないと。
その頃の私は空っぽだった。人形と言われても仕方のない存在だったと思う。大人の言うことを聞いて、オーディションで勝ち残ることだけを考えて、仕事だけをこなすような存在。
47:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:13:58.48 ID:d3Zd/SN00
「泰葉ちゃん。事務所の意向で子役の仕事は一時的に休業して、モデルの仕事を中心に切り替えていきたいと思う」
その時のマネージャーさんは言った。幼い頃から、私はモデルの仕事もやっていた。子役としての仕事が増えていくにつれてモデルの仕事をする比率は少なくなっていったが、それでもモデルとしての仕事をしなくなったわけではなかった。
どうして子役の仕事を休業するのか。その頃の私にはその理由がわからなかったが、それでいいと思った。その方がいいんだ、と。
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