4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:39:55.71 ID:pES0toMOO
白い天井、消毒液の匂いで満たされた部屋、隣のベッドから聞こえてくるすすり泣き。
私の日常はこの小さくて偏った病院の一室だけ。
神様はみんなに平等じゃないの?なんで私だけが辛い思いをしなきゃいけないの?
5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:40:35.94 ID:pES0toMOO
そんな私を支えてくれるものがあった。私の世界を広げてくれるものがあった。
小さい備え付けのテレビ。
バラエティーもアニメも、映画もドラマも、移り変わる光景に私は心奪われる。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:41:08.32 ID:pES0toMOO
「お母さん!私大きくなったらアイドルになる!」
お母さんはその言葉を聞いてどう思ったのだろう。
強く抱きしめられ、ごめんねと頭を撫でられる。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:41:38.05 ID:pES0toMOO
色んな人が私に可哀想だと声をかけてくれる。
あれも出来ない。これも出来ない。無理をさせてはいけない。
私は小さいころから「無理」と言う言葉を積み重ねていくしかない。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:42:08.05 ID:pES0toMOO
小さいころから少し達観していた部分はあった。
捻くれている訳じゃないけど、出来ないことばかりだし、
無理なんだと割り切る性格がそうさせてしまっているんだと思う。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:42:36.54 ID:pES0toMOO
「加蓮聞いた!?」
「なにー?」
「同じ中学だった渋谷凛って子覚えてる!?」
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:43:24.06 ID:pES0toMOO
彼女の話はあまり頭に入ってこなかった。
渋谷凛、知っているぐらいの子だった。
特に目立った噂は聞かなかったけれど、少し大人びていて、静かな子だった印象ぐらいだ。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:43:58.38 ID:pES0toMOO
久しぶりに音楽情報を漁ってみる。
『渋谷凛』
そのワードを探してみる。少し話題になっていたみたい。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:44:38.58 ID:pES0toMOO
正直、羨ましいと思った。
何で私じゃないんだろうって、胸がむかむかした。
でも、私には無理なんだって。出来ない人間なんだって。
そうやってこの胸の不快感を消化しなければ。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:45:21.51 ID:pES0toMOO
春が終わりを迎え、夏の暑さを迎える少し前、
ミントの花が咲き始めて、その葉の匂いに心落ち着かせる。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:46:10.45 ID:pES0toMOO
「アイドルに興味はありませんか?」
低く響く声よりも、その大男から発せられた言葉の内容に、胸がざわめきたつ。
「アンタがアタシをアイドルにしてくれるの?」
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