23: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/07/23(木) 10:42:50.37 ID:GZmeom5L0
「そうだ、今の話は日向には内緒にしといてね。間違いなくケンカになっちゃうから」
「そんなのダメですよ−!」
考える前に出た大声に伊勢さんが眉を吊り上げるのを見て、急に申し訳なくなった。
「すいません、大声なんか出して……」
「いや。確かに大鯨の言う通りだ。相談して正解だったね」
私には返す言葉がなかった。でも何か言おうとあれこれ考えていたら、結局別のことを尋ねてしまった。
「どうして、そんなことを?」
「ん? どういう意味? 悩みを話した理由なら言ったと思うけど」
「そうじゃなくて、なんで私が悩んでるかなんて。一言も言ってないのに……」
「ああ、それか。ねえ、大鯨。最近ちゃんと笑ってる?」
「当たり前、じゃないですか?」
「ふうん……」
なんで、そんなイムヤちゃんみたいなことを?
「まあ、そう言うならそれでもいいけど。ねえ大鯨――ううん、あえて龍鳳かな?」
体が強張るのを自覚した。伊勢さんは肩の力を抜いて笑う。
「君の悩みは君だけのものなんだ。相談に乗ったりはできても答えは自分で出すしかない。だから、その悩みを大事にしてあげるんだ。悩みが宝なんて身勝手なことは言わないけどさ」
「私は別に……」
「あー、そうだ。この前作ってくれたご飯、美味しかったよ」
「はい? あの……ありがとうございますぅ」
なんでだろう、急に脈絡のないことを言われたのは。
「それとさっきはあたしと日向を心配してくれたんだよね?」
「そんなの当たり前ですよ……」
「つまり君がそう考えてるってことだよね。だったら鯨か龍かなんて重要じゃない気がする」
それは、と言い返しそうになって声が出てこない。言い返すような言葉を初めから持っていないから。
「でも悩めばいいよ。それは君にしかできないことだから……ああ、なんの話だったっけ? まあいいか」
話はこれでお終い。伊勢さんの雰囲気にはそう言いたげな気配が確かにあった。
「まあ、君の場合は外から与えられた答えなんて初めから必要なさそうだけどね」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
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