24:名無しNIPPER[ saga]
2015/07/30(木) 10:52:48.10 ID:0mdGQCl30
婆「そうかい……よくやったじゃないか」
男「でも、僕は彼女に好きすら言えずに……」
婆「……あの娘、店を出る前に私に目くばせしててね」
男「え?」
婆「机の上に、これを残してたんだよ」スッ
男「これは……机に置いてる和紙ですか?」
男(それは、不慣れであろうボールペンで書いた文章)
【これは男さんが来た時に、渡していただけたら嬉しいです】
【髪留め、とても嬉しかったです】
【不器用な貴方が選んでくれた贈り物、できればずっと持っていたい】
【ですが、もう時間が無いようです……どうせ消えてしまうのなら、思い出の品として、貴方に持っていて欲しいです】
【せっかく頂いたのに、ごめんなさい……でも、本当に嬉しかったですよ?】
婆「……これの事かい?」スッ
男「……はは、ずるいなぁ、女さんは」
男「無くなってから言われたら……断れないじゃないですか」
婆「……これでも食べて、元気だしな」コト
男「あ……白玉ぜんざい……」
男「……うまい」モグ
女『男さん』
女『はぁ〜……落ち着きますねぇ』
女『はい、待ってます』
男「……」コキュ
男「この漬物、塩がきつ過ぎですよ……」
男「ぜんざい、が、しょっぱいです……」ポロッ
婆「……」
男「くそっ……もう泣いた、って、言うのに……」
婆「……」
婆「……落ち着いたかい?」
男「はい、失礼しました……」
婆「実はねぇ、そろそろこの店も閉めようと思うんだよぉ」
男「え」
婆「息子夫婦にねぇ、家に移らないかと言われててねえ……もう長くは無いし、続けていられる自信がないからねえ」
男「そんな……」
婆「お兄ちゃんには本当に感謝してるよぉ、この年寄りの話し相手になってくれて……おまけに神様にまで合わせてくれて」
婆「もう思い残す事はない、良い人生だったよ……それで、これからどうするつもりだい?」
男「……僕は」
『――また、いつか』
男「僕は……思いつきですけど、成功する自信なんてこれっぽっちもないし、甘い世界じゃないでしょうけど」
婆「うん」
男「――小説の勉強、してみようと思うんです」
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