過去ログ - 男「夏の通り雨、神社にて」
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25:名無しNIPPER[ saga]
2015/07/30(木) 11:32:20.53 ID:0mdGQCl30
男「この神社に来るのも、何年ぶりだろう……すっかり綺麗になって」

男(あの不思議な神様と過ごした夏から、およそ十年が経った)

男(ようやく僕の小説が、人に評価されるようになった)

男(ここはそのモデルとなった神社、と言う事で、今ではすっかり人気が出ている)

男(誰かが「恋愛成就の神様がいる」とか適当な事を言ったせいで、特に女性に人気があるそうだ)

男(その人気にあやかって、祭りもこの神社でやる事になったらしい)

男「……信仰心を取り戻しても、やっぱり消えたから駄目だったか」

男(真っ青な空には、立派な入道雲)

男(僕は目を閉じた)

アハハ……ソッチイッタゾー……

男(どこかで子供達が遊んでいる)

ヒュウウゥウゥウゥ……

男(涼しい風が、僕の首筋に流れた汗を払っていく)

ミーンミンミーン……ミンミーン……

男(木が多い神社の中は、相変わらず、目が眩みそうな蝉時雨で)

男(あの時の夏は、何よりも綺麗なものだったんだ)

男(もう戻ってくることはない。そう思った瞬間、急に胸が切なくなった)


「お久しぶりですね」


男「!!」バッ

女「今日は生憎の雨、ではありませんけど」

男「女……さん……」

男「……あの夏の忘れ物、届けにきましたよ」スッ

女「お面と玉……ずっと持っていたんですか?」

男「あはは、そりゃ持ってますよ。……それと」

男「髪留め……今度は、受け取ってくれますか?」

女「……はい!」ニコ

男「女さん……大好きです、あの時は言えなかったけど」ニコ

女「……ふふ、神様をこんなに待たせた罪は重いですよ?」

男「おや、何をすれば良いのでしょうか?」

女「……これからも、ずっと一緒に居てもらいます!」

男「はは、それは重いですねぇ」

男(僕の中で、十年前に止まっていた夏が、また色づいて動き始めた)

男(今度は、漠然とした不安を抱える事はない)

男(僕らの暑い暑い夏は、まだ始まったばかりなのだから)


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