過去ログ - 咲「金髪くんと」京太郎「文学少女ちゃん」
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10: ◆BrPpnaZzMC3Z[sage]
2015/07/28(火) 02:06:12.19 ID:fdC9lNPQo
 

 仄かに照らしてくる月を見上げたまま、頬を冬の冷たい風に撫でられ続ける。

 しかし、頬の熱が奪われることはなかった。

 もはや胸の鼓動は早鐘のようで痛みすら感じる程だ。

 夜で良かった、と思う。

 きっと、みっともない位に顔に血が昇ってしまっているけれども、この暗さならもし振り返ってこられても、ばれることはなさそうだ。


「咲、寒いんだし早く家に入れよ」


 振り返らずに帰路につきながらひらひらと手を振っている京太郎に、見えはしないだろうが、咲は小さく手を振って応えた。

 漠然ともう少し一緒にいたいなんて頭の片隅に過るが、言葉にすることなんてできるわけもない。


「また、な。咲」

「うん。また、ね。京ちゃん」


 別れの挨拶を交わし合った後、門扉を抜け、玄関の扉の前まで進む。

 咲が一度振り返ってみると、京太郎の背中は夜の闇に紛れて、もう見えなくなるところだった。

 今までなら覚えなかった寂寥感が胸を突く。

 咲はそれを振り払うようにふるふると首を左右に振った後、玄関の扉を開いた。

 


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