過去ログ - 咲「金髪くんと」京太郎「文学少女ちゃん」
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9: ◆BrPpnaZzMC3Z[sage]
2015/07/28(火) 02:03:32.52 ID:fdC9lNPQo
 

「何でそこで咲が偉そうなんだよ……到着っと」


 京太郎が苦笑をこぼしつつ、一歩大きく踏み出し咲の家の前で止まった。次いで空を見上げる。

 追って咲も視線を向けると、煌めく星々と陰りのない月が夜を彩っている。

 ただ素直に、綺麗だと思った。


「月が綺麗だな」


 背を向け星空を仰いだ京太郎の呟きを聞いて、不意に鼓動が跳ねた。

 月が綺麗。それは文字通りであって、特別な意味などないはずだ。

 創作かどうか定かではないとある逸話なんて、きっと彼は知りもしないだろう。

 同じ夜空を仰ぎ、同じ月を見て、そして同じ感慨を抱くに至った。

 おそらく、ただ、それだけ。

 そう、それだけのはずなのに、何故かその一言に咲は胸が躍るのを自覚した。

 落ち着けと念じて、一度深く息を吸う。

 続けて何故、と自問。


(……ああ……そうか私は……)


 はっきりと意識してみれば、答えは至極単純だった。

 特別な意味を期待してしまった自分がいることを否応なしに理解してしまう。

 いつ育ち始めたのかも定かではない余りに近過ぎて気付けなかった感情が、確かにある。

 姉の言葉はそれを意識した切欠ではあったが、本当の始まりはまた別だったのだろう。

 


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