14:名無しNIPPER[saga]
2015/08/02(日) 03:47:59.00 ID:V8gzDOoiO
いくら理論的な打ち筋が確立されていようと、麻雀は運の要素も強い。
配牌などは積み込みやすり替えなどの所謂イカサマを用いない限り、理論上では完全な運である。
流れや勢いなど、その場限りの要素で多少の良し悪しがあったとしても、基本的には対局者全員が対等なはずなのである。
しかし、この卓上では、その前提がことごとく覆っていた。
有効牌をツモれない。そんなことは麻雀をやっていればいくらでもあることだ。
一局のなかでそれが延々続くと内心でボヤくこともあるかもしれない。
それが数局続くと、誰もが気付く。
『おかしい』と。
息苦しささえ覚える閉塞感、圧迫感。手の進まない苛立ちと浅くなる呼吸からくる軽い酸欠で正しい判断が下せない。
…いや、判断など、この場ではなんの役にも立たなかった。
逃げ場がない。安全地帯のない異常事態。
もはや河が判断材料にならない。ちいさな悪夢の捨て牌が、まるで大口を開けて待つ奈落への落とし穴のように見えて。
眼鏡をかけた男性が手を崩す。大した役も付かない二向聴だが、それでもこれまで身を削る思いで揃えた面子を崩した。
直前で対面の小太りの男性が捨てた牌。聴牌気配が濃厚な少女――天江衣が見逃した牌。
ここを通せば手の内にはまだ同じ牌が一牌ある。対子落としで二巡もやり過ごせばまた状況は変わるだろう。
そう思った男性の展望は、和了宣言によって脆く打ち砕かれる。
衣「ロン、だ。11600の二本場は12200」
親の高目、直撃。眼鏡男性の点棒が一瞬で底つきかける。
それは、まるで悪夢だった。
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