20:名無しNIPPER[saga]
2015/08/02(日) 03:54:32.42 ID:V8gzDOoiO
衣はひとり、卓に取り残され、半眼で辺りを見渡していた。
視界の隅で付き人の執事が如才なく会計を済ませていた。そこから横に滑っていくと、ひとりの女性が茫然と立ち尽くしている。
先程まで咲と衣が対局していた卓に視線を釘づけにされている。
勝負の後で常より昂揚していた衣は、手慰みにその女性に話しかけていた。
衣「理解できないか?」
薄ら笑いを貼り付けた少女の問いは、女性の思考には届かなかった。
彼女――小鍛治健夜の頭のなかには、オーラスを一息に終わらせた少女の見せたわらいが占めていた。
健夜「彼女…名前は」
衣「宮永咲だ」
べつにだれに問うたわけでもなかったが、すぐそばにいた少女(あるいは女児とも見えた)が教えてくれる。
健夜はその名を、深く噛み締めるかのように反芻する。
健夜「宮永…咲…」
咲「はい?」
唐突に背後からかかるもうひとつの声に健夜の心臓が跳ねる。
健夜「うわあ!?」
咲「…なんですか?ひとの名前を気安く呼んだり、返事をすれば大仰に驚いてみせたり。失礼ですよ」
非難するように睨めつける視線はかなり冷やかだったが、健夜としても真実心底驚かされて困惑していた。
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