120: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2016/01/15(金) 06:34:49.14 ID:/aoxDJVuo
  
 廃砦から持ち帰った、書物を呪術師が見せてくる―――それは、呪術の才覚のない野盗にも扱える呪術書。 
  
 呪術師「この書物を経由する事で、呪術の才覚なしに発動出来る。仕組みとしては魔術に近くしている」 
 「私にさえ、そうした仕組みは作れない。間違いなく、私よりも上級の呪術者……かなり、厄介」 
  
 犬勇者「マジか……てことは、俺のこの身体も……元に戻せる見込みは?」 
  
 呪術師「殆ど皆無。自然に呪いが消えるのを待つか、魔女に解呪させるか……」 
  
 状況はどうにも絶望的らしい。神官では無理なのはわかっていたが、まさか呪術師でさえ……。 
  
 犬勇者「ちなみに、自然に戻るのを待つとすると……」 
  
 呪術師「少なく見積もって、100年」 
  
 犬勇者「なげぇ!? 無理だわ、それは無理だってば……マジなの?」 
  
 呪術師「分からない。人間を他の動物に変えるのは、呪術としては最上級。私も、噂話程度でしか聞かない……」 
 「神代の時代、魔族も人類も区別のなかった時代にしか存在した文献もない。今となっては、使えるのは魔女、可能性は低いけど魔王だけと考えられる」 
  
 犬勇者「お前、よくそんなヤツと戦って生きてたな……」 
  
 呪術師「戦ってない。一方的に戦闘不能にされた。呪術を使えない様に、血も抜かれたから……許さない……」 
  
 呪術師が物凄い真顔でぶつぶつと呟き始めた。こうなると本気で怒ってるって言うのが、良く分かる。 
 眼は細くなってまるでナイフみたいだ。うーん、あんまり怒らせたらダメなタイプだよなあ……。 
  
 犬勇者「じゃあさ、魔女はなんでお前を殺さなかったんだろう」 
  
 呪術師「分からない。けど、野盗を使って私を誘き寄せたのは間違いない。それに、野盗に始末はさせるつもりだった」 
 「誤算は……勇者が、助けに来るという事。それを計算していたなら、間違いなく魔女は私を殺していたはず」 
  
 犬勇者「んー……王都を、攻めるには呪術師が邪魔って事か? まあ、以外に詰めの甘いヤツって事か……」 
  
 呪術師「真意は分からない。でも、明確な敵である事には違いない―――少し、整理しよう」 
  
 犬勇者「そうだな……色々、ありすぎて、まだ整理がつかない」 
  
 彼女が頭の中で整理している間、俺もまた状況の整理をする事にした。 
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