25: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/08/03(月) 19:17:29.52 ID:RYHG2sjFo
――森の家屋・呪術師の家
彼女の家は森の中にあった。簡素な、台風でもやってくれば吹き飛びそうな小さな小屋の様な家だった。
「汚い家でごめんね。殆ど寝るだけの家だから……」
黒いローブを脱いで、部屋着へと着替えながら彼女は俺に言う。
ベ、別に着替えシーンが見たい訳じゃないから俺はそっぽを向いていた―――ふと、目に写ったのは一枚の写真だった。
「それは妹。同じ顔が二つあると、犬でも驚く?」
写真には確かに魔法使いが……二人、並んで映っていた。
見れば見るほどどちらが、どちらなのか分からない。つまり、双子……いや、でも魔法使いはそんな事を俺に言わなかった。
天涯孤独の身だと、アイツは俺に言っていたはずだった。嘘、ついてたってことか?
呪術師「妹は魔法使いって言う。私は呪術師。妹はもういないんだ」
犬勇者「…………わん?」
呪術師「ふふ、聞きたい? 妹は勇者と一緒に行っちゃった」
「嬉しそうに……今頃は、魔王討伐に精を出してると思う」
犬勇者(………)
申し訳ない気持ちに襲われてしまう。妹さんは殺されたし、付いて行った男は情けなくも生き長らえて犬になっているんだから。
呪術師「だから、私一人。君も一人? 私と……一緒だね」
頭を撫でられ、俺はぐうの音も出ない。この人にはきっと恨まれているだろうし、魔法使いの事を知らない彼女に撫でられる権利など無いと思っているから。
呪術師「君は勇敢。まるで勇者みたい。でも、あんな無謀な事はしちゃ駄目。勇者は、特別……他の存在に、真似はできないんだよ」
悲しそうに、目を伏せて彼女は言う。俺は何とも言えず、只々項垂れるしか出来なかった。
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