過去ログ - 摩耶「あたしの妹離れ」
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7: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/08/08(土) 23:05:52.76 ID:eMWdeDR60



「なるほどねー。摩耶は鳥海にべったりだもんね」

「んなことないよ。あたしは姉さんたちにだって……」

「でも鳥海は特別、でしょ?」

「……そうだよ。双子だし」

今のは少しだけ嘘も入ってる。それだけが理由じゃない。

あたしは憶えている。

重巡『摩耶』の生涯を。

自分のことなのに他人の目を通したように思い返す記憶は、今のあたしが艦娘だから?

今と昔の姿がダブるのも艦から人の形に変わったずれが生んだ結果?

そんな小難しいこと、あたしに分かるわけがない。分かるのは……あたしたちは比島沖で全滅した。

いや、正確には高雄姉さんだけは生き残ったけど、脱落した時点で死刑宣告を受けたと思った。いくら護衛がついてたって手負いの巡洋艦が無事に離脱できるような情勢じゃなかったから。

だから姉さんの運はよかった。この話をしてくれた姉さんが絶対にそう考えないとしても、あたしはそう思う。

あたしは……姉さんたちを失って二人だけの姉妹になってしまったんだと思った。

なんとかしたかった。だけど、あたしもすぐ何もできないまま沈められた。鳥海だけを残して。

思い出そうとする記憶はいつも鳥海の顔で終わる。

泣きたいのに泣けない顔で唇が動く。どうして――と。

……そんな顔で見ないでくれ。

記憶の中の泣けない鳥海の代わりにあたしが泣いて起きた夜は何度もあった。そんなことで鳥海も、あたしも救われないのに。

幸か不幸か、鳥海は軍艦としての記憶をほとんど持っていない。

だから、あたしはきっともう離しちゃいけないんだ。二度目はないんだから。

あの時は伸ばせなかったこの腕を、今度こそ――あたしは――。





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