108: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:14:02.12 ID:s8phhYh5O
「そう、この事務所は立ち上げたばかりで、アイドルがまだ居ないんだ――」
社長が、ちひろの言葉に首肯を添え、
「――出来ることなら、君たちにアイドル第一号となって貰いたい」
109: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:14:36.15 ID:s8phhYh5O
「この業界で長年やってきた、とはこないだ話したね。こうやって自分の事務所を持つのは夢だったのだよ。
ゆくゆくは、765や961にも負けないレベルにまで育て上げたいと思っている」
765も961も、業界最大手クラスのアイドル事務所。
110: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:04.63 ID:s8phhYh5O
凛は、熱く語る社長を、賛否の入り交じった視線で見た。
――このオジサンは、本当に熱意と夢を持っているのかも知れないけど……
対して、社長は身振り手振りがどんどん大きくなる。
111: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:35.81 ID:s8phhYh5O
「……えっ、さっきあんなに怯えてたのに、そんな即答しちゃっていいの!?」
驚いた顔で隣を向くと、少女も凛の方を見て、「はい、やっぱり悪い人そうには見えません」と微笑んだ。
お人好しと云うか、世間知らずと云うべきか――
112: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:16:02.25 ID:s8phhYh5O
言葉の裏に秘められた、アイドルへの強い憧れを感じ取った凛は、どう受け取ればよいか迷った。
「自分もアイドルとして輝きたい」と同意する理想主義的な見方、
「夢想家だね」と冷ややかで現実主義的な見方、その両方が頭中に渦巻いているからだ。
113: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:16:35.25 ID:s8phhYh5O
「おっはようございま〜す! すいませーん総武線がちょっと遅れてて時間ギリギリになっちゃいました〜♪」
およそ申し訳ないとは思っていないであろう口調で、一人の女の子が入って来た。
外側に撥ねた短めの茶髪を揺らして、大股で向かってくるその子は、
114: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:17:08.90 ID:s8phhYh5O
それにつられ、凛の隣に坐る少女も、
「あ、そう云えば私たち自己紹介がまだでしたね」と、思い出したように手を叩く。
「私、島村卯月です。17歳になったばかり。宜しくお願いします!」
115: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:17:58.14 ID:s8phhYh5O
不意のあだ名に、卯月はやや驚く。
「えっ? し、しまむー?」
「そ! “しまむ”ら“う”づきだから、しまむー。どお〜?」
116: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:18:32.03 ID:s8phhYh5O
ぼーっと二人の様子を見ていた凛は、いきなり話を振られてまごついた。
切れ長でやや吊り目がちな双眸と、への字口のまま、思考をショートさせて数秒ほど固まる。
初対面の相手からすれば、凛は近寄り難い雰囲気であろうに、未央はそれを気にする様子が微塵もない。
117: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:19:02.22 ID:s8phhYh5O
ソファに腰掛けたまま、やや引き気味に口を開いた。
「え、あ……わ、私は……渋谷、凛。……15歳。でもまだアイドルになるって決めたわけじゃ――」
「ええ!? 15歳? 大人びてて綺麗だから歳上かと思ってました!」
118: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:19:39.18 ID:s8phhYh5O
「それじゃあしぶりんだね! 宜しく!」
未央が右手を差し出してきたので、反射的に立ち上がって、おずおずと握り返す。
そこへ卯月も加わって、三人で手を重ね合った。
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