228: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:09:00.98 ID:s8phhYh5O
しばらく無言でレッスンの様子を眺めていたが、やおら、社長が振り向いた。
「さて、プロデューサーの卵諸君。目の前に、これまたアイドルの卵の三人がいる。
今日、スタジオまで君たちを同行させたのは、担当する子の方向性を見出して欲しいからだ」
229: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:09:31.60 ID:s8phhYh5O
プロデューサーの卵三人は、急な催促にきょとんとしながらお互いを見る。
「んまぁ、或る程度のプランは立てておかないと活動できないモンね。あの娘たちのことよく見ておかないと」
「ここで全部ガッチガチに決めるワケじゃねえもんな。確かに、どう売り出していくか、ってのは重要だ」
230: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:10:19.38 ID:s8phhYh5O
――
「プロデュースの方針、ですか」
231: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:10:55.91 ID:s8phhYh5O
それじゃ、と銅が一歩前に出る。
「はいじゃあ卯月ちゃんね、アナタはもう即戦力になりそうだから、すぐに営業を始めるわ」
「そ、即戦力……」
232: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:11:22.92 ID:s8phhYh5O
そうだ、このために、養成所で頑張ってきたのだ。
ずっと、ずっと憧れてきたアイドルの世界への一歩を、ついに踏み出す時がきた。
「ローカル局やケーブル局辺りから売り込んでみる。ドサ回りも多いと思うけど、地道にこなしていきましょ」
233: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:12:17.60 ID:s8phhYh5O
「ういー、んで未央、オメーは――」
銅に続いた鏷が、一旦言葉を切って、手許の用紙から視線を挙げた。
そのまま未央の全身を眺め、何度も首を縦に振る。
234: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:12:51.32 ID:s8phhYh5O
云い方は多少――いや、かなり――卑俗だが、明確な展望や売り込み方の方針に、未央も鼻息荒い。
「やー、この未央ちゃんの可愛さが全国に知れ渡るのも、時間の問題と云うヤツですかな!?」
「それはお前次第だろうな。俺ぁ仕事は取ってくるが、その仕事で結果を出すのは俺の役目じゃねえ」
235: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:13:40.60 ID:s8phhYh5O
「そして凛。君はアイドル活動はまだちょっと先だ。しばらくレッスン漬けになってもらおうと思う」
Pが、プランを記した用紙を凛に渡しながら告げた。
236: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:14:07.77 ID:s8phhYh5O
手許には、達成すべき目標がびっしりと書き込まれていて、自然と武者震いが起こる。
「凛はきっと輝ける。二人で、トップアイドルを目指そうな」
「ふふっ、頼んだよ、プロデューサー。ぼーっとしてたら置いてっちゃうからね?」
237: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:14:34.80 ID:s8phhYh5O
『鍛える』――言葉としては格好良いが、その実、現時点では使い物にならない、と云うことを意味する。
無論、これまでただの一般人だった自分が、すぐにアイドルとして輝けるなどとは思っていない。
流石に自惚れてはいないつもりだ。
238: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 03:15:13.84 ID:s8phhYh5O
ミーティングを終え、日がすっかり暮れた中を、凛たち三人は飯田橋駅まで歩く。
いよいよ本格活動を開始するだけあって、皆、幾分か気負っているようだ。
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