352: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:56:58.24 ID:s8phhYh5O
「凛。お前は、ぶっちゃけ云えばリズムがだいぶ拙い」
Pの正直な指摘に、自覚のなかった凛は目を丸くした。
「え? 私の中では正確に刻んでいるつもりなんだけど……」
353: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:57:31.91 ID:s8phhYh5O
「はいOK」
Pが制すると、手にはマイク付きのレコーダー。凛のクラップを録音していた。
「じゃあ聞いてみよう」
354: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:58:01.79 ID:s8phhYh5O
Pはそれをラップトップコンピュータに取り込み、波形として表示した。
手の鳴るタイミングごとに切り取って並べると、長さが全く揃っていないことを文字通り“見せつけ”られる。
「聴覚だけだと結構あやふやだけどさ、こうやって視覚化すると、結構……心にクるだろ?」
355: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:58:32.42 ID:s8phhYh5O
再度、ブースの機材でミニマルテクノを流し出して問う。
「凛は普段、どんな曲を聴いている?」
「いつも聴いてるのは特にこれと云ったこだわりはないけれど……音楽番組を見て気になる曲を買う程度、かな」
356: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:59:00.31 ID:s8phhYh5O
ミニマルテクノは、使う音が少なく構成が単純な分、反復で快楽を与えむとするジャンルである。
フレーズの反復、展開の反復。そしてそれら全てに関わってくるのが、リズムを反復することの気持ち良さだ。
そして、リズムによって精神をトランスさせるべく、とても高度にパターンが練られたものが多い。
357: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:59:37.10 ID:s8phhYh5O
「確かにずっとこういうのを聴いていればリズム感は鍛えられそうだけどさ――」
凛は、まだ何となく納得しきれていない顔をする。
「人間の気持ち良さは、揺らぎ……っていうんだっけ? そこにあるんじゃないの? 1/fとかいうやつ」
358: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:00:04.62 ID:s8phhYh5O
半信半疑な様子の凛に、ブースから降りたPが傍へ寄った。
「さて、せっかくこんな場所にいるんだ。聴くだけじゃなくて身体にも染み込ませよう」
そう云って、表拍のベースドラムに合わせて脚を、裏拍のハイハットに合わせて腕を動かすように指示を出す。
359: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:00:32.36 ID:s8phhYh5O
「プロデューサーは私をオーバーワークで潰したいの? 今、体力結構ぎりぎりなんだよ?」
「その疑問にも一理はあるが、ライブまでにお前のどうしようもないリズム感を改善させなきゃいかんだろ」
不信感が少し込められた凛の言葉に、Pの語気がやや強くなった。
360: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:01:01.67 ID:s8phhYh5O
「ちょっと、どうしようもって……言い方ってもんがあるんじゃない?」
「事実を云ったまでだ。言葉を取り繕ったってしょうがないだろ」
「たとえ本当のことでもストレートでぶつけられたら良い気はしないでしょ!」
361: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:01:29.03 ID:s8phhYh5O
先にクールダウンしたのはPだ。
「言い過ぎた。色々と悪かった。このリズム感は喫緊の課題で、今のレッスンと並行して進める必要があるんだ」
凛も、Pにつられてボルテージがしぼむ。
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