458: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:19:25.59 ID:s8phhYh5O
そのまましばらく眼を閉じ――意を決したように麗を視た。
「麗さん、ありがとうございました。私、行かなきゃいけないところができました」
麗が相好を崩して大きく頷く。
459: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:19:56.59 ID:s8phhYh5O
事務所の扉が、バン! と大きな音を発して開けられた。
飛び込んで来たのは、凛。
460: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:20:30.80 ID:s8phhYh5O
あれだけ鳴り響かせたのに、ちひろ以外は顔を出さない。社長はおろか銅も鏷も、そしてPも外出中のようだ。
「ちひろさん、社長とプロデューサーは?」
「Pさんなら、さっき遅いお昼を食べに出たから、そろそろ戻ってくるんじゃないかしら」
461: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:21:12.93 ID:s8phhYh5O
こんな夕方まで昼食を摂らないほどだったのだ、きっと筆が進んで食べる機会を逸したに違いない。
やれやれ、片付けてあげるべきか。いや、もし作業途中なら下手にいじるのはまずい。
机を見て凛が考えていると、書類の束の下に『渋谷凛 '11, 6〜』と書かれたノートが鎮座しているのを発見した。
462: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:21:39.72 ID:s8phhYh5O
それでも。
凛は、周りをきょろきょろと見渡す。
ちひろは手許の書類に集中していて凛の様子に何ら気付いていない。
463: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:22:59.99 ID:s8phhYh5O
一番始めのページは、初仕事で大失敗したときの苦い思い出と、それを自戒する言葉、そして決意の文。
次ページから、日記形式で、凛の考察が書かれていた。
レッスンの様子を見て浮上した課題や、それを解消するためには何が必要か。
464: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:23:26.24 ID:s8phhYh5O
そして方々に散りばめられたPの想い。
初のステージで観客の視線を釘付けにできた誇り。
みくとのライブバトルに勝たせてやれなかった、指導者としての力不足。
465: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:23:54.15 ID:s8phhYh5O
しかし、だとしても、ただの赤の他人のため、ここまで身を粉にできるだろうか?
芸能界へ飛び込む前から妙な縁があった女の子だから?
初めての担当アイドルだから?
466: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:24:30.94 ID:s8phhYh5O
これほど自分のことを見てくれていたとは、予想だにしていなかった。
自分はそんなことも知らず、なんて言葉を浴びせてしまったのか。
凛は、胸が締め付けられる思いがした。
467: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:25:23.23 ID:s8phhYh5O
応接エリアのソファで凛が宿題を解いていると、Pが昼食から戻ってきた。
立て付けが急に再び悪くなったドアを訝しみながら、事務机へと戻る。
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