462: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:21:39.72 ID:s8phhYh5O
それでも。
凛は、周りをきょろきょろと見渡す。
ちひろは手許の書類に集中していて凛の様子に何ら気付いていない。
463: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:22:59.99 ID:s8phhYh5O
一番始めのページは、初仕事で大失敗したときの苦い思い出と、それを自戒する言葉、そして決意の文。
次ページから、日記形式で、凛の考察が書かれていた。
レッスンの様子を見て浮上した課題や、それを解消するためには何が必要か。
464: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:23:26.24 ID:s8phhYh5O
そして方々に散りばめられたPの想い。
初のステージで観客の視線を釘付けにできた誇り。
みくとのライブバトルに勝たせてやれなかった、指導者としての力不足。
465: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:23:54.15 ID:s8phhYh5O
しかし、だとしても、ただの赤の他人のため、ここまで身を粉にできるだろうか?
芸能界へ飛び込む前から妙な縁があった女の子だから?
初めての担当アイドルだから?
466: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:24:30.94 ID:s8phhYh5O
これほど自分のことを見てくれていたとは、予想だにしていなかった。
自分はそんなことも知らず、なんて言葉を浴びせてしまったのか。
凛は、胸が締め付けられる思いがした。
467: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:25:23.23 ID:s8phhYh5O
応接エリアのソファで凛が宿題を解いていると、Pが昼食から戻ってきた。
立て付けが急に再び悪くなったドアを訝しみながら、事務机へと戻る。
468: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:26:01.59 ID:s8phhYh5O
そのまましばらく目線を交わらせ、
「……ごめん。その……色々と」
深めに頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
469: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:26:30.28 ID:s8phhYh5O
「着拒されたから、俺のプロデュース人生が終わったかと、結構本気で思った」
「麗さんにね、お前は早合点する癖がある、って……諭されちゃった」
Pは、自分の知らないところで橋渡しをしてくれた麗に心の中で感謝した。
470: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:27:00.70 ID:s8phhYh5O
「こないだ負けて、まだまだだって思い知らされた。だけど、これから頑張ってあのレベルまで成長できても、
その頃にはみくだって同じように力をつけて、もっと先に行ってるよね……」
握る手に、不安の力がこもる。
471: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:27:46.15 ID:s8phhYh5O
「パラ、ドックス……?」
「そうだ。そのパラドックスは一見、正しいことを云っているように思えるんだよなぁ」
古代ギリシャ人を悩ませた有名な逆理。
879Res/463.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。