521: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:28:17.00 ID:SScT0J3gO
いい音を出すには、楽器の奏法だけではなく、楽器の構造を知っていなければならない。
例えばギターは、弦を弾いて、その振動をボディに共鳴させ増幅し、豊かな音を届ける楽器だ。
522: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:28:54.91 ID:SScT0J3gO
それは声も同じ。
声帯を震わせて作る空気の振動を、咽喉や口腔で共鳴・調整して出力している。
523: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:29:32.30 ID:SScT0J3gO
雄弁に語るPに対し、凛はいまいち自信がないようで、怪訝な顔つきをしている。
「本当にそうなの? いまいち信じられないんだけど」
524: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:30:26.05 ID:SScT0J3gO
「それだよ」
Pが手を叩いてから、ビシッと凛の口を指差した。その仕種はいくらか大仰だ。
「え?」
525: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:31:15.29 ID:SScT0J3gO
「だが爺さんや婆さんじゃ、おそらく無理だろう。0から9までのボタンがある従来の携帯電話ならまだしもな。
ホーム画面で何をすればいいのか判らず、固まってしまうはずさ」
画面に表示されている“飾りのような絵”に触れれば良いなんて、初めて手に持つ人間にどうして見当がつこうか。
526: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:32:01.71 ID:SScT0J3gO
「ではこの差はなぜ起きるか? それはお前がスマホと云う新概念の構造を知っているからだよ」
スマホだって身体だって、構造を理解することが第一歩……凛は、なるほど、と思った。
「それにしたってさ――」
527: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:32:32.27 ID:SScT0J3gO
「ほれ」
日に焼け、擦り切れたその本。
中のページには鉛筆でびっしりとメモ書きがされている。
528: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:33:26.23 ID:SScT0J3gO
どのようにして曲は作られているのか。
どのようにして曲は組み立てられているのか。
自分の歌っているラインは、その部分の和声――つまりハモり――に於いてどのような役割を果たすのか。
529: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:34:01.68 ID:SScT0J3gO
「なんかそういう音楽の理論って、楽典……って云うんだっけ? ああいうのじゃないんだ?」
凛が本をぱらぱらとめくって、不思議そうに呟いた。
「楽典なー。音大生なら誰でも持ってる『黄色い楽典』も確かにあるが、ありゃあクラシック方面だからな。
530: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:34:32.11 ID:SScT0J3gO
「うっさい。中学高校の野郎が書く文字なんてそんなもんだろ」
Pが口を尖らせた。しかし、
「……今は?」
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