526: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:32:01.71 ID:SScT0J3gO
「ではこの差はなぜ起きるか? それはお前がスマホと云う新概念の構造を知っているからだよ」
スマホだって身体だって、構造を理解することが第一歩……凛は、なるほど、と思った。
「それにしたってさ――」
527: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:32:32.27 ID:SScT0J3gO
「ほれ」
日に焼け、擦り切れたその本。
中のページには鉛筆でびっしりとメモ書きがされている。
528: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:33:26.23 ID:SScT0J3gO
どのようにして曲は作られているのか。
どのようにして曲は組み立てられているのか。
自分の歌っているラインは、その部分の和声――つまりハモり――に於いてどのような役割を果たすのか。
529: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:34:01.68 ID:SScT0J3gO
「なんかそういう音楽の理論って、楽典……って云うんだっけ? ああいうのじゃないんだ?」
凛が本をぱらぱらとめくって、不思議そうに呟いた。
「楽典なー。音大生なら誰でも持ってる『黄色い楽典』も確かにあるが、ありゃあクラシック方面だからな。
530: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:34:32.11 ID:SScT0J3gO
「うっさい。中学高校の野郎が書く文字なんてそんなもんだろ」
Pが口を尖らせた。しかし、
「……今は?」
531: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:35:02.91 ID:SScT0J3gO
「わかった。これ、借りていいんだよね?」
凛がパタンと閉じて表紙を掲げ、問うた。
「勿論だ。手前味噌だが、昔の俺が書きまくったメモのおかげで、より内容を理解しやすくなってると思うぞ」
532: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:36:15.63 ID:SScT0J3gO
――
凛の集中力は凄まじい。
533: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:37:02.13 ID:SScT0J3gO
明と慶が、驚きに満ち満ちた表情でレッスンをつけている。
ニュージェネレーション用に書き下ろした曲の三声ハーモニーが、
卯月、未央、凛、それぞれの三つの音で組み上げられ、混ざり、溶け合った。
534: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:38:09.59 ID:SScT0J3gO
「渋谷、凄いじゃないか。ここ一週間ほどで見違えたぞ」
聖が手許のバインダーに色々と書き込みながら相好を崩した。
明や慶と違ってやや厳しい彼女が、ここまで手放しで褒めるのは中々ないことだ。
535: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:38:23.65 ID:SScT0J3gO
「凛、ちょっと残ってくれ」
更衣室へと向かう背中に、Pが呼び掛けた。
「ん? どうしたの?」
536: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:39:32.25 ID:SScT0J3gO
「そう。技術的なことはトレーナーさんの指導があるから割愛するとして……俺からは感覚的な話をな」
凛に語りがてら、聖にスタジオをこのまま少し使ってよいか訊ねる。
「ん、ああ構わない、まだ時間的には大丈夫だ。そうか、姉から伝聞していたが、キミも指導するんだったな」
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