過去ログ - 鷹富士茄子「私を見つけてくれたから」
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27:名無しNIPPER[saga]
2015/08/16(日) 05:09:07.96 ID:6kfpk/gV0


「行っちゃ駄目!」


ふと、重苦しい静寂が女性の叫びに打ち消されました。とても悲痛な響きを持つ叫びでした。
俺はその声にハッと正気に戻り、自分がいつの間にか社に後数歩で届くという距離にまで近づいていたのに気付きました。
引きこまれるみたいに、だけじゃなく本当に引きこまれていたんです。

慌てて飛び退くようにして社から離れたものの、勢い余って転んで尻餅をついて今度は痛さで動けなくなってしまいました。
辛いものを食べた時に出て来るような、脳天を刺すあのつーんとした痛みに涙を押し殺しつつお尻をさすっていると、また女性の声がしました。


「何でこんな所に……あぁでも、止まってくれて良かった」


深刻そうな呟きと、安堵の息。
お尻の痛みが引いてきて、ようやく色々と考えられるようになって初めて、今の声は一体誰のものなのかと思い周囲を見回しました。
すると一人の女性が、先程のとは別の、丹塗の社の前に立っていました。

俺の目はまた、釘付けになっていました。
煌びやかな金の文様が散り散りになって浮かぶ、燃えるような紅の着物に身を包んだ綺麗な女性。
顔は、今でも思い出せません。でも、とても優しくて、表情が豊かで、綺麗な人だったという事だけは覚えています。



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