過去ログ - いろは「先輩と、アフタークリスマス」
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12:名無しNIPPER
2015/08/16(日) 17:47:41.62 ID:HDGh0YhN0
いろは「先輩、比企谷八幡先輩。あなたのことが、好きです。愛しています」

言われて、しまった。ここから今のセリフをなかったことにするとか聞こえなかったことにするっていうのは…………ムリゲーだ。

だからせめて、せめてもの足掻きだ。示すのは曖昧な拒絶。俺のやり方はこうなんだ。……それはきっと、もう変えられない。

八幡「は、ははは、あれだろ?罰ゲームか……そうでなかったらドッキリだろ?実は駆け去ったと見せかけて小町とか大志とか隠れてるんだろ?」

いろは「本心、ですよ。先輩」

一色は多分、わかっている。曖昧な拒絶を、俺が奉仕部を離れたわけを。……その感情を怖れていることを。

いろは「先輩は受験生で、もう12月で。……あと数か月も学校にいなくて」

いろは「もっと早く先輩を好きになってたら、とか先輩が同じ学年だったらとかいつも考えてるんですよ」

いろは「本当は、言わない、言えないとおもってたんですけどね〜」

いろは「半年ぐらい会話もしてなくて、顔合わせることもなくて」

いろは「もう、終わったこと、もう、冷めている……そう自分に言い聞かせていました」

いろは「でも…………久々に会って、先輩はやさ、しくて……わたしを…………気にかけてくれて……」

いろは「舞台に上がって、告白してくれた時はすごく嬉しかったのに、ただのその場しのぎの演技で……」

いろは「先輩は!自分がピエロになっていればいいと思っているかもしれないですけど!!…………私の気持ちは………………どう……なるんですか…………」

最後の方は完全に涙声で言葉も途切れ途切れ、だけど、聞こえないなんていっちゃいけない。

彼女の言葉を、心を、しっかり受け止めなくちゃいけない。そう、思った。

いろは「……この人、その場しのぎでこんなことやってるんだってわかった瞬間の喪失感…………すごかったです……」

いろは「その時……わたしこんなに…………先輩のこと好き、だったんだって……想い……知らされて……」

いろは「…………我慢……できなく……なっちゃって……」

いろは「ひとつでも多く、先輩との思い出を…………作れたらよかったはずなのに……」

一色が俺にぶつけてきた感情、それは「本物」なのだろうか。

そもそも本物ってなんだ。本物なんてあるのだろうか。逆に…………偽物はあるのだろうか。

仮に偽物があったとして、ここでこうして思いの丈を俺にぶつけている一色が葉山を想っていたことは偽物なのだろうか、なら、俺への想いは本物なのだろうか。

いや、違う。きっと偽物なんて最初からなくて一色にとって、俺にぶつけている想いが本物なら、葉山に向けていた想いも本物なのだ。

なら、俺が、雪ノ下や由比ヶ浜から逃げたという事実も、逃げたのが俺だというのにも関わらず、寂しいと感じているのも本物なのだ。

ああ、なんだ。本物に関する答えはすでに出ていたのだ。幸せの青い鳥ってやつは、ずっと近くにいたのだ。

八幡「一色…………なんていうか………………その……」

いろは「……はい」

八幡「……ありがとう」

いろは「…………………………はい」

八幡「今、俺の中で何か……込み上げてくるものがあるんだ。……それは多分、本物というものに対しての俺の一つの答えなんだと思う……」

いろは「………………」

八幡「……明日、雪ノ下と由比ヶ浜と話してみるよ」

いろは「…………そう、ですか」

それだけ言って一色は後ろを向く。ふうと小さく息を吐く音が聞こえた。

それから一拍おいて一色は振り返ると、

いろは「うまくいくといいですね!応援してます!」

花が咲いているような錯覚をした。涙目のまま、笑顔を作った一色はそれ自体が非常に美しく、まるで一枚の絵画のようであった。


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