10: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:56:01.87 ID:oqOK19Xn0
 霞に注意をしようと、荒潮は横を向く。荒潮の視界の端に映ったのは、 
  
 いつものように体を小さくして、後ろから歩いてくる提督の姿だった。 
  
 「て、提督! お疲れ様です!」 
11: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:56:52.18 ID:oqOK19Xn0
 ***** 
  
 「――ていうことがあったの。もう、背筋がぞっとしたわ〜」 
  
 食事の席で姉妹そろって雑談を楽しむ、荒潮と霞を含む、姉妹一同。 
12: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:57:23.80 ID:oqOK19Xn0
 その中にただ一人、提督に敬意を払う艦娘が、声を上げた。 
  
 「私は司令官のこと、好きですよ」 
  
 食堂は静まりかえり、食堂の誰しもがその発言主を、目を丸くして見ていた。 
13: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:57:50.26 ID:oqOK19Xn0
 「朝潮は、提督を尊敬するとかじゃなくて、その、『好き』って言ってるの?」 
  
 「はい。私は司令官のことを尊敬もしていますし、好きです」 
  
 「はぁ、意味わかんない」 
14: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:58:17.05 ID:oqOK19Xn0
 ***** 
  
 「朝潮ちゃんの言っていること、ちょっとわかるんだよね」 
  
 「ええっ! 北上さんももしかして、提督のことを……」 
15: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:58:50.78 ID:oqOK19Xn0
 唯一の男性であっても、提督に好意を抱く者などいない。 
  
 それが、この鎮守府の艦娘たちの暗黙知だった。 
  
 それだけに先の朝潮の発言には全員が耳を疑い、 
16: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 13:59:25.88 ID:oqOK19Xn0
 ***** 
  
 淡々と時は過ぎ、怪我人は毎日のように出る中にも死者は一人も出ず、 
  
 戦場としては平和かもしれない生活が続いていた。 
17: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 14:00:19.18 ID:oqOK19Xn0
 戦争は激しさを増すが、我が国の有利で敵は押され、 
  
 勝利は確定となった。 
  
 そして、戦争は終わった。数年に渡る戦争が、あっけもなく終わった。 
18: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 14:01:47.29 ID:oqOK19Xn0
 提督は最後の任務として事務的な仕事を済ませ、鎮守府を去る。 
  
 この鎮守府のその後はまだ未定だ。 
  
 そして、鎮守府の入り口には、一人分の影。 
19: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 14:02:15.44 ID:oqOK19Xn0
 艦娘の社会での戸籍を決める際に、朝潮は自ら、提督に願い出た。 
  
 自分を、提督の養子にしてほしいと。 
  
 これにはさすがの提督も目を丸め、戸惑った。 
20: ◆zPnN5fOydI[saga]
2015/08/17(月) 14:02:44.63 ID:oqOK19Xn0
 二人は鎮守府の入り口で、鎮守府に向かって敬礼をする。 
  
 戦下で共に戦い、共に生きてきたともいえる鎮守府への、最低限の礼儀だ。 
  
 長い敬礼を終え、二人は本部の寄こした車に乗った。 
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