2: ◆2YxvakPABs[saga sage]
2015/08/19(水) 23:42:23.85 ID:jRTVHHoQ0
「だから、なんでそんなこと言うんですかッ!!?」
日本が大々的な寒波に襲われ、そびえ立つビルも氷の柱になってしまうのではないかと心配になる冬。
文明の利器であるストーブこそあれど、部屋の中での厚着は欠かせない寒さの中、私……安部菜々は声を荒げる。
乾燥した空気が喉に触れ、叫んだこともあり喉がカラカラになった。アイドルは喉が命であることは重々承知しているが、今のナナはそんな考えすら浮かばないほどヒートアップしている。
プロデューサーの部屋に染み込んでしまったナナの叫び声は、ナナとプロデューサーの間に沈黙をつくる。
「……ふぅー」
彼は、こめかみを抑えながら、ゆっくりと息を吐いた。窓の外のように冷たい息だと思った。
聞き分けのない子供を相手にしているようなプロデューサーの態度に、ナナは少しカチンとくる。
そんなナナの事など気にした様子もなく、彼はまた同じ言葉を繰り返すのだ。
「あのな、安部。もうあのキャラはキツイから、止めろと俺は言っている」
「だから――っ」
「あーあー、もう叫ぶな。耳が痛い。だいたい、こんなこと言われる心当たりはあるんだろ?」
「そ、それは……」
「仕事も減ってる、新曲も出ない、ファンも増えない……それが何故か分かるか?」
「……」
言いたくない。
だが、彼は沈黙するナナに突き放すように言うのだ。
「それは、お前のそのキャラが受けてないからだ」
「――っ」
「ウサミン星から来たウサミン星人? 永遠の17歳? 妙なキャラ付けがお前の評判を落としていることに気づかないのか?」
「インパクトは……あると思います」
「そりゃ最初だけだ。あとは見ていて痛々しいだけだぞ。しかも、ボロも出しまくり。自分の中で設定が曖昧である証拠だ」
「……」
「いいか。お前だけが楽しんでたんじゃ意味が無い。ファンを楽しませるのがアイドルだ。今のお前のそれは、ただの自己満足だ。中途半端な設定などない方がマシだ」
「なんで……そんな言い方しか出来ないんですか……」
馬鹿にされている。
今までのナナのことを、全否定されているような気持ちになり、涙が瞳にたまり、今にも零れそうだ。
だが、泣いたら、それを認めたことになる。
「何故こんな事を言うかって? そりゃ、俺がお前のプロデューサーだからだ。俺には、お前を有名にする義務がある。お前をプロデュースするのが俺の仕事であり使命だ」
「だったら」
「だからこそ。売れも受けもしない妙なキャラ付けを続けている奴は放っておけない。いいか安部。お前は可愛い。同年代の女性から比べるととても魅力的だ。だから、お前はもっと別の方面からプロデュースすべきなんだ。そのためには、あのキャラは邪魔でしかない」
「……前のプロデューサーさんは、ナナのこのキャラを認めてくれたし応援してくれたり、好きだとも言ってくれました」
「『前の』、な。今のプロデューサーは俺だ。俺には俺のやり方があり、考えがある。もちろん、お前の意見も尊重する。だが、あのキャラだけは認めるわけにはいかない」
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