過去ログ - シンデレラの姉
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3: ◆2YxvakPABs[saga sage]
2015/08/19(水) 23:43:15.81 ID:jRTVHHoQ0

「……もういいです!! 埒が明きません!」

 ナナは、ズカズカと扉の向かって歩いて行く。
 平行線をたどる会話は、お互いの妥協点すら見当たらない。
 冷たいドアノブに触れ、ナナの手のひらの体温が奪われた時、プロデューサーに突き放すような言葉をかけらた。

「しばらく休暇をやるから……いや、今は休暇しかないのか。とにかく、頭を冷やせ。この寒空の下を少し散歩すれば、頭に昇った血も冷めるだろう。そして冷静に考えろ。これからどうしたら、アイドルとしてのお前にもっともよい結果になるのかを」

 ナナは、返事をしなかった。
 力任せに扉を開け、力の限りドアを閉めた。子供のような対応だ。自分でもわかっている。
 だが、それが今できる最大限の反抗だった。
 大きな音が鼓膜に響く。廊下の空気は冷たくて、でも、あのプロデューサーがまとう空気よりは暖かく感じた。
 溢れそうになった涙を、そっと袖で拭う。
 あぁ、認めるしかない。こんなにイライラしているのは、彼の言うことがまったくの的外れでないことを、頭のどこかで理解しているからだ。


 プロデューサーが別の人に変わったのは、ほんの1週間前。
 それまでは、ウサミン星から来たウサミン星人として、少ないながらも仕事をこなし、楽しく活動していた。
 前のプロデューサーさんも、ナナのために一生懸命売り込みをしてくれていた。無名のナナに、ある程度仕事が来るようになったのは、間違いなく彼のおかげだ。
 ナナをスカウトしてくれたのも、元プロデューサーさん。あの時、ナナはアイドルになれる魔法をかけられたのだ。

 だが、日に日に仕事は減る一方。
 そんな時、プロデューサーさんの異動命令が下った。今、彼は中堅アイドルのプロデューサーをしている。
 そして出会ったのが、今のプロデューサー。一週間は様子見とばかりに何も干渉してこなかったのだが、ついさっき呼び出され指摘され、やがて口論となった。
 いや、ナナが一方的に熱くなっただけだ。

「どうしたら、アイドルとしてのナナにとって、もっとも良い結果になるか……かぁ」

 最後の彼の言葉が離れない。
 延々と耳に残り続けている。



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