過去ログ - シンデレラの姉
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8: ◆2YxvakPABs[saga]
2015/08/19(水) 23:46:13.22 ID:jRTVHHoQ0


――*――*――*――



 ライブ当日。
 ギリギリまでプロデューサーさんとの打ち合わせがあり、細かい段取りを頭に叩き込む。
 会場はそれなりの人が集まっていた。
 大きな会場ではない。ライブも自分だけのライブではない。だがそれでもこの小さな会場に人が集まっていることに、どうしても胸が高鳴ってしまう。
 すでにライブはスタートしていた。
 ナナは真ん中。開演して間もないので、自分の出番までは時間があった。

「よし、俺は他にやることがある。あとは大丈夫だな」

「はい」

「大丈夫だ。短い期間だったが練習もしっかりしていた。お前ならきっと大丈夫だ。ライブ、いちファンとして楽しみにしているぞ」

「……はい」

「じゃぁ、またあとで」

 プロデューサーさんとの最後の確認が終わり、彼は部屋を出て行った。
 ふぅーっとナナは息を吐いた。
 緊張とは違う、別の気持ちが胸を苦しくする。わかっている。これはきっと罪悪感なのだと。
 これからやろうとしていることは、明らかに裏切りだ。ナナのことを本当に思ってくれているプロデューサーさんに、砂をかけるに等しい行為。
 止める事もできる。だが、やるしかないのだ。
 これがうまくいかないようでは、どの道ナナに後はない。

 そうして、ナナは今着ている新・安部菜々の記念すべき第一号の衣装を……脱いだ。
 プロデューサーさんが用意してくれた、大人な雰囲気が生地の上から伝わってくる、新しい安部菜々の殻を。



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