7: ◆2YxvakPABs[saga sage]
2015/08/19(水) 23:45:32.18 ID:jRTVHHoQ0
「意見が平行線のままなら、この話はしないつもりだったが、今なら俺は全力でお前に協力する。来週こそが、新・安部菜々の初舞台だ」
「……」
「今後の方針について、茶でも飲みながらゆっくり話そうじゃないか。急なライブだが、お前ならできると信じているぞ」
「曲は、どうするんです? 流石に1週間じゃ……」
「カバーだ。『碧いうさぎ』って曲を知っているか? 結構有名な曲だから、知っていると思う。新しいお前にピッタリな曲だ。あとは振り付けだが、ゆっくりとした曲だ。激しい振り付けにも難しい振り付けにもならない」
「碧いうさぎ……」
聞いたことはある。
ゆっくりとした、落ち着きのある曲だ。
今までのナナからすると、まったくの逆と言ってもいいテンポの歌。
プロデューサーは懸命にこれからの方針を話していった。
さっきまでの言い争いが嘘のように、話が流れるように進んでいく。
具体的な話がスラスラと出てくる彼を見て、きっと、この1週間の間に考えた、彼なりの考えなのだとすぐに理解できた。
それと同時に、目の前のプロデューサーが本当に一生懸命ナナのことを考えてくれていたのだと分かった。
ナナのことを軽視していたわけではない。ウサミン星人を馬鹿にしたいだけじゃない。前のプロデューサーさん同様、方向性は違えどナナを全力でプロデュースしようとしてくれている。
「……聞いているのか?」
「あ、すいません、聞いてます、プロデューサー『さん』」
「……ようやく、トゲトゲした言い方じゃなくなったな」
「え?」
特に意識をしていなかったので、突然のプロデューサーさんの言葉にナナは首を傾げてしまう。
彼は、「なんでもない」とだけ伝えると、話を進めていった。
そして、自分がいつしか今のプロデューサーさんのことを、プロデューサーさんと『さん付け』で呼んでいる事に気付いた。
あぁ、そうだ。
自分を懸命にプロデュースしてくれる人なのだ。敬意を評して当然だ。
だからこそ、ごめんなさい、プロデューサーさん。
「もしもし……お願いがあるんです……プロデューサーさん……いえ、『元』プロデューサーさん」
ナナは、彼との打ち合わせの帰り道、元プロデューサーさんへと一本の電話を入れた。
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