1: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/25(火) 22:55:48.54 ID:zH5hcsps0
百合
たぶん短い
ちょい暗い話
その日は台風が近づいていて、
大雨強風警報が出ていた。
『ワン! ワン!』
耳に残っている。
雨の音に交じる、失われた声。
どうしようもないことがある。
どうにもならないことが――。
彼――ロップは私と同じ14歳。高齢だったけれど、与えられたエサはいつもぺろりと食べてくれて。
走るのは前よりも遅くなった。でも、私を引っ張る力は強かった。
白くなった瞳には、もう私の姿は映ってなどいなかったかもしれない。
それでも、私の出すエサを彼はいつも全部食べてくれたのだ。
声が止んだのは、昨日の夜9時を回った辺りだった。
毎日エサをやり続けていたのに、彼はいなくなってしまった。
殺されたのだ。
私の父と母によって。
いつもそう。
あの二人は、気に食わないことがあれば、暴力で解決する。
喧嘩して、傷だらけになって、嬉しそうにしている。
吠えるロップを黙らせるために、彼らは何度も叩いていた。
何度も。
始めは甲高かった鳴き声。
徐々に小さくなった唸り声。
きみのこえは、すぐに聞こえなくなった。
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