1: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/25(火) 22:55:48.54 ID:zH5hcsps0
百合 
 たぶん短い 
 ちょい暗い話 
  
  
  
  
  
 その日は台風が近づいていて、 
 大雨強風警報が出ていた。 
  
  
 『ワン! ワン!』 
  
  
 耳に残っている。 
 雨の音に交じる、失われた声。 
 どうしようもないことがある。 
 どうにもならないことが――。 
  
 彼――ロップは私と同じ14歳。高齢だったけれど、与えられたエサはいつもぺろりと食べてくれて。 
 走るのは前よりも遅くなった。でも、私を引っ張る力は強かった。 
 白くなった瞳には、もう私の姿は映ってなどいなかったかもしれない。 
 それでも、私の出すエサを彼はいつも全部食べてくれたのだ。 
  
 声が止んだのは、昨日の夜9時を回った辺りだった。 
 毎日エサをやり続けていたのに、彼はいなくなってしまった。 
 殺されたのだ。 
 私の父と母によって。 
 いつもそう。 
 あの二人は、気に食わないことがあれば、暴力で解決する。 
 喧嘩して、傷だらけになって、嬉しそうにしている。 
 吠えるロップを黙らせるために、彼らは何度も叩いていた。 
 何度も。 
 始めは甲高かった鳴き声。 
 徐々に小さくなった唸り声。 
 きみのこえは、すぐに聞こえなくなった。
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2: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/25(火) 23:31:47.80 ID:zH5hcsps0
 眠いのでいったんここまで 
3:名無しNIPPER[sage]
2015/08/26(水) 12:23:04.30 ID:4quvHzkF0
 期待 
4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/26(水) 22:34:19.46 ID:drAlN+rA0
 今朝になり、冷たく硬くなったロップを庭先に埋める作業を手伝った。 
 軒先の一部分だけがこんもりと盛り上がっていて、 
 その上に花を植えようとしたけれど、台風が来ているからと止められた。 
 指先は土臭くなっていた。 
  
5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/26(水) 22:47:20.76 ID:drAlN+rA0
 その頃には、雨が降り始め、風が強く吹き始めていた。 
 500円玉を握りしめて、自室に引きこもった。 
 ベッドの上で寝返りを打つと、 
 右の脇腹が鈍く傷んだ。 
 蒸し暑い。 
6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/08/26(水) 22:56:24.93 ID:drAlN+rA0
 その前に、私自身をどこかへ隠してしまいたい。 
 ダンゴムシのように、ベッドを転がる。 
 目測を誤って、 
  
 「あ……」 
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