2: ◆.s5ziYqd8k[saga]
2015/08/27(木) 21:44:37.50 ID:hxdoE4+A0
仕事場と言えば聞こえはいいけど、俺みたいな若造にできる仕事なんて要は雑用だ。
特に男でありながら魔物と戦わないのなら、力仕事をするか頭を使うかのどちらかだけ。
「む、食材の搬入か。ご苦労、念のため調べさせてもらうぞ」
返答を待たずに荷物を漁られるのもいつもの事。余分に持ってきた果物をくすねる事も、だ。
「今日も早朝から雑用とイビリを受けてな、さすがに腹が減っていたところだ」
女だてらの騎士などそんなものだがな、と笑う少女は小さな頃と何も変わらない。
ふと、手入れのされた髪を指先でなぞってみる。十年前にはこんなこと、何でも無かったのに。
「ん……懐かしいことをするじゃないか。その気になったか?」
少し細めた目。長い金の髪や声の調子があいまって、どこか悪戯っぽい色が浮かぶ。
「冗談だ。お前はそんな柄でもないだろう、さ、通って良いぞ」
撫でていた手に彼女の手が添えられ、名残惜しさも無さそうに解かれる。
すれ違った瞬間、いつものように甘くて頭が痛くなりそうな匂いが漂ってきたのは、きっとそういうことなのだろう。
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