6: ◆.s5ziYqd8k[saga]
2015/08/27(木) 22:38:24.27 ID:hxdoE4+A0
「で、どうなんだよ。今日はいるのか?」
知らん。どうして俺が知っていると思うのやら。
「使えないなあ、ったくよお……あーあ、居ないじゃんか」
居ても居なくても、仕事には何の支障も無いだろう。そう伝えてもぶつくさと文句を垂れ流すのだから困ったものだ。
とはいえ、仕事は仕事。同僚も手を休めはせず、城の裏の貯蔵庫へと運んでいく。
裏手といえば、騎士の訓練所も近い。青空に響く声からするに、新人の訓練が行われているらしかった。
「おっ、騎士の訓練だぜ。俺もいつか入りてえなあ」
……現金な奴だ。女に会えなくても騎士の声で満足できるなんて、こんな楽な奴はいない。
「いいじゃんか、俺、来年には試験受けるぜ。下級騎士なら俺でもなれるからな」
やけに自信満々な理由はやはり、荷物運びで鍛えた筋力だろう。チラリと見れば、俺が苦労する大きさの甕を軽々と抱えているのだから。
「へへ……おっ! おいおい、あそこにいるの、騎士団長じゃねーか! いいもん見たなあオイ!」
よくもまあ、重い甕を抱えてよそ見が出来るものだ。
ため息交じりに一瞬目を向けてみれば、なるほど、城壁の上から見下ろしているのは騎士団長に違いない。
「カッコイイよなあ、俺もヒゲ生やそうかなあ」
豊かな髪を後ろに束ねて短いヒゲを生やした姿。獣のような目だが、器は大きく朗らかな男。
同僚が一番目を輝かせるだけあって、いい男には違いない。
……俺にとっては、特に憧れる存在でも無いんだが。同僚の夢を壊す必要もないだろう。
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