10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:18:52.08 ID:rVNZ4GiQo
〜
「あっ、ひま姉!」
「こんばんは花子ちゃん。ちょっと久しぶりですわね」
チャイムを鳴らすと、エプロン姿の花子ちゃんが出てきた。どうやら今日の夕飯当番らしい。小学5年生にして日頃の夕飯作りを任されているのはすごいと思うが、撫子さんが大学生になって櫻子と花子ちゃんしかいない今、彼女の方が担当する頻度は多いのだろう。
「どうしたの?」
「久しぶりにクッキーを作ったから、櫻子におすそわけしようと思って……あ、もちろん花子ちゃんにもありますわ」
「わあ、ありがとう……あ、どうぞあがって? 櫻子ー! ひま姉来たー!!」
少し久しぶりに会ったが、花子ちゃんもやはりいつかは私を追い越し、追い抜いてしまいそうなくらい背が大きくなっていた。楓と毎日一緒に学校に行ってくれているお礼も込めて、花子ちゃんのクッキーもしっかりと作っていた。
櫻子の部屋をノックすると、中からワンテンポ遅れて「はーい」と返ってきた。ドアが引かれて櫻子は顔をのぞかせると、「……いいよ、入って」と招き入れてくれた。
久しぶりに来る櫻子の部屋は思ったよりも片付いていた。撫子さんがこの家を出てしまい、ちゃんと部屋を掃除しろと言う人がいなくなったのではないかと心配になっていたが、逆に櫻子はしっかり者になってきているのかもしれないと思えた。
櫻子は立てかけてあった丸テーブルを出して私にクッションを渡すと、自分はベッドに腰掛けて背中を伸ばした。
「今日は忙しいって言ったのに……」
「まあまあ、そんなに長く居座るつもりはありませんわ。これ渡しに来ただけですから」
「……クッキー?」
「ええ、さっき楓と一緒に作ったんですの。だから櫻子にもと思って」
「あー……ありがと」
「これすごいでしょう? ちょうど材料があったから色々なフレーバーのものを作ってみたんですの。メロンフレーバー、バナナフレーバー、ストロベリーに……これは普通のバタークッキーで、こっちがチョコチップ」
「ほんとだ……すごいね、カラフル」
「久しぶりにお菓子作りなんてしたものですから楽しくなっちゃって……どうぞ?」
「うん」
櫻子は薄黄緑色のメロンフレーバークッキーを手にとり、さくりと口にいれた。今日の出来栄えには自信があった。「ん……」と美味しそうに口角が上がったのを私はしっかり確認した。
自分の作ったお菓子を食べて、櫻子が嬉しそうな顔をするのが好き……私は中学の時だけじゃない、もっと小さい頃からそんなことをやっていた。懐かしく嬉しい感覚がじわじわと胸の内から溢れてくる。
「……どう?」
「ん、うん。思ってたよりもすごくおいしい」
「どう思ってたんですの……」
櫻子に同じクッキーを一枚手渡され、一緒に食べる。味見で一通り食べてはいたのだが、櫻子に渡されたクッキーが一番サクサクで美味しい気がした。
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