過去ログ - 櫻子「みんなで作る光のパズル」/向日葵「葉桜の季節」
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3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/13(日) 19:38:56.73 ID:28Y7hCbSo
「こんなこと言ってももう遅いけど……あの子、バカすぎるよ。黙ってひま子を手放すなんて……」


「ひま子みたいな良い子には……何度人生をやり直したとしたって、そう簡単には会えないよ……」

「撫子……」


撫子は携帯を机の上に置き、両手を合わせてうつむいた。深すぎるため息をつき、しかし目の前の私がいることに配慮して「あ……ごめん暗くなっちゃって」と謝った。


「もう、わたしに気なんか遣わないで?」

「うん、でも……ごめん……」


こんなに元気のない撫子を私は初めて見た。年数にしてみればまだそこまで付き合いが長くない私たちとはいえ、非常に撫子らしくないと思える。

だがつまるところ今の撫子が抱えている失望感は、私なんかには到底想像がつかないほど大きなものなのだろう。大切な人たちの一生が芳しくない方向に左右され、そして取り返しがつかないかもしれないとまでくれば……


撫子はぎゅっと拳を固くにぎると、またすぐに携帯をとって寝室に向かった。


「ごめん、ちょっと……今日はもう寝るね」

「うん……おやすみ」

「おやすみ……」


時刻は夜9時30分。撫子がこんな早い時間に眠ってしまうはずはなかった。もう一度電話をするために部屋を移したのだと思える。

決して厚いわけでもない仕切り一枚隔てただけの私がいる部屋には、当然電話の声は聞こえてきてしまう。撫子は会話を聞かれること自体は別に気にしてないようで……きっと今からする電話で泣いてしまうかもしれない自分を、私に見られるのが恥ずかしいのだろう。

恥ずかしがることなんて全くないのに……私は撫子以上に妹想いな人をこの世で見たことがない。それは私が撫子を好きになった、たくさんある部分のうちのひとつだ。


『……うん、電話来たよ。ひま子無事に受かったんだね』


やはりその話し声はどんなにボリュームをしぼっても、この私たち二人しか住んでいない静かな学生用物件の部屋の中では聞こえてきてしまう。

聞き耳を立てるわけでもなく、勝手に耳に入ってきてしまう撫子の声。

怒っているのか、悲しんでいるのか。その気持ちは一言で表せるものではないだろう。



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