過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
1- 20
106: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 13:44:07.22 ID:iuS/I4U4o



 翌日、期待と不安を胸に抱きながら、あたしは今までいた病棟を後にした。新たな病棟の案内をしてくれたのは別の看護師。てっきり椎名さんがしてくれると思っていただけに少し残念な気持ちがあったが、やはり新しい風景というのは心を踊らせてくれる。どうにか記憶を取り戻すきっかけになってくれればいい、そう思いながら新しい病室へと足を踏み入れた。
 同じ病院内の施設ということで部屋の構造自体はそう変わりない。広さは16畳といったところ。窓は開けられていて、以前のような暗雲に満ちた空ではなく、少しだけ霞んだ青空が窓枠の中に広がっている。
 次に目に入ったのは、恐らくすでにこの部屋で過ごしているであろう相方のベッドを囲っているカーテン。真っ白な布が室内の左側大部分を占めている。そのため、人間2人という居住スペースにしては広さのあるこの部屋でも、多少手狭に感じさせる。
 看護師がカーテンの向こうに声をかけたが、睡眠中なのか返事は帰ってこない。
 少しの沈黙の後、看護師は苦笑いして「日本語は話せる方だからすぐ仲良くなりますよ」と耳打ちして部屋を出て行った。
 けれど、不気味に静止したカーテンとは裏腹に、あたしの心は揺れていた。
 無音の中、あたしはベッドに腰掛けてカーテンに目をやった。
 ただの真っ白な布切れなのに、このまま見ていたら吸い込まれそうだ。あたしはこの巨大な薄布の先を覗いてやりたい、そう思った。けれど知ってしまうのが怖い気持ちもあった。この向こう側に触れてしまったらあたしがあたしでなくなるような感覚。そんな予感めいたイメージがあたしの中にはあった。
 気づけばあたしは、吸い寄せられるようにしてカーテンの前に立ちはだかっていた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
573Res/579.73 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice