過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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111: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 13:52:14.70 ID:iuS/I4U4o
「覚えているのは、自分の名前……。そして君の名前だけ……」

「ふむん……あまり事態は好ましくないわね」

 あたしが答えると、彼女は口元に指を押し当て視線を床に移し呟いた。
 まだ安心はできない。記憶が無いことをいいことにあたしにあることないこと吹き込んで利用しようっていう可能性も否定出来ないから。

「っていうかいい加減警戒するのやめてほしいわけだが……」

「言ったでしょ。まだ信用できないって」

「そうよね……そうなるわよね……となるとどうしたものか……」

 言って、頭を抱えてうなだれてしまった。あたしに信用されていないのがショックだった、とまではいかないけれど、どこかしら落ち込んでるような……。
 思わず同情しかけて、構えを解いてしまう。
 そんな自分にはっとして、再び警戒する。
 だめだだめだ、油断は死につながる。そう教えられたはず!

「…………」

 こんなことを教えられるなんて、あたしは戦いに身を置く職業──例えば軍人とかだったんだろうか。でもこの1週間、あたしはあたし自身という人間について何度も考えたからなんとなく分かる。あたしは何かのために必死にもがき続けるただの人だったんじゃないかって。迷いや後悔もあるけれど、ただひたすら前を向いて、ただひとつの目標に向かって──
 けれど、今のあたしはポキリと刃が折れてしまったカッターナイフだ。鍛え上げられた軍人のように研ぎ澄まされたナイフなんかじゃ決してなかった。刻んできた命の証は失われて、自分が何をしてきたのか全く分からない、ただの人だった。
 そう思うと、張り詰めていた心がふと緩むのを感じた。


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