過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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172: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/08(木) 13:47:23.89 ID:OOOkqekxo
「と、友達と会えなくなるのは、誰だって悲しいじゃん……」

 そう、あたしは嫌だった。牧瀬紅莉栖はあたしの友達だ。少し気が強すぎるところがあるけど、まっすぐで、いつも自信があって、凛としている。ある種の憧れのようなものもあったのかもしれない。

「ごめんなさい、でももう決めてしまったの。私は私の可能性にかけてみる」

「ここじゃだめなの? みんながいるこの場所じゃできないの?」

「できないことはないけれど、それだときっと私は決断できなくなる」

 決断……?

「思い出を消してしまうこと、躊躇ってしまうかもしれない。それは嫌だから」

 思い出が消える? さっきから何を言ってるのか全くわからない。

「何言ってんのかわかんないよ!」

「今はまだ、分からなくていい。きっと分かる時が来るから」

 そう言って1人悲しそうな笑みを浮かべて──

「ううん、分からない方が、幸せかもしれない……」

 そう付け加えた。
 あたしには到底理解できない何かを抱えているのだけは分かった。けれどどうすることもできない。何を思い悩んでいるのか、想像もつかないあたしに、彼女の気持ちを理解するのは到底ムリだった。
 ただ拳を震わせるあたしをふわりと暖かさが包んだ。華奢だけど、とても大きくてほっとするような腕に抱かれて。

「ごめんなさい。でも、鈴羽には自分の幸せを手にする権利がある」

「…………」

「鈴羽、約束よ。あんたは、幸せになりなさい」

 なぜかその一言で、あたしの涙腺は崩れて散った。止めどなく流れる涙が彼女の白いシャツを濡らした。
 牧瀬紅莉栖の作った朝食は塩っぱくてまずかった。
 やっぱりあたしは弱い人間だった。どうしようもなく、弱かった。


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