過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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203: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/09(金) 17:02:06.94 ID:EXR5HU4So
「…………」

 鈴羽が俯いたおかげで、普段はおさげにまとめられてる長くてくせのある髪の毛が双丘を覆い隠した。それにほっとしたのも束の間。鈴羽がこちらに歩み寄ってくる。
 ばっ、ばか! それ以上近づいたらっ──
 どぎまぎして視線をずらす。

「ねえ、あたしを見て──」

 そんな心情を見透かされてしまう。俺は仕方なく視線を鈴羽に戻す。ただし、できるだけ顔に集中する。さっきより距離が近いからか、鈴羽の肌の色。体の輪郭。肉感がより鮮明に映し出された。

「岡部倫太郎──目をそらさないで」

「あ、ああ……」

 視線と視線がぶつかった。暗闇の奥できらりと静かな光を佇ませる鈴羽。その表情は固く、眉尻は下がり気味だ。
 ”あたしを見て”か──
 なぜかなつかしいような感覚に陥る。今までそんな風に言われたことなんてないはずなのに。デジャブ、というやつなのだろうか。それとも失われた記憶が関係しているのだろうか。
 薄暗かったこの部屋に一筋の光が差し込んできた。気づけばどんよりとした暗雲は霧散し、その隙間からオレンジの光が割って輝いていた。
 黄昏時。
 その明るい日差しが鈴羽の身体を優しく照らした。
 俺は息を呑んだ。
 鈴羽の身体にはいくつもの古い傷跡が刻まれていたのだ。
 胸部から腹部にかけて走る歪な切痕。
 太ももに浮かび上がる銃創。
 1つ1つは小さくとも、痛々しいほどに刻みつけられた負の印。
 俺はその数々の痕に釘付けになっていた。


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