過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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216: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/09(金) 17:39:24.47 ID:EXR5HU4So

 時は流れ、やがて年を重ねていくけれど2人は変わることもなくこの先も続いていく。そう思っていた。
 春夏秋冬、あらゆる季節を幾度と無く繰り返し歩いた道。1本の傘の中を2人、進んでいく。
 俺たちのそばには今、優しい雨が舞い降りてきていた。
 わずか数十センチ頭上の傘に降っては弾け降っては弾け、そっと音を生み出していく。その音色はまるで俺たちを祝福するハーモニーのようで。
 気持ちが満たされていく。穏やかな時間が流れていた。
 ふと、誰に言うでもないような小さな声が俺の鼓膜を震わした。

「こういう日常も悪くないよね」

 それは独り言のようでもあり。同意を求めるようでもあり。
 俺はこの10年を省みていた。一見すると隠居した老夫婦のような共同生活。
 今思えば、近くにはいても、微妙な距離感が2人の間に壁を作っていたように思える。
 紅莉栖の言葉のせいだけじゃない。俺の中でかすかに、鈴羽の体温を感じることに躊躇いがあった。
 それでもいいと思った。体は結ばれなくても、共に時間を超越した一心同体の存在だ。そう自分に言い聞かせていた。いつの間にか変化を恐れる気持ちがあったのかもしれない。
 やがて俺は研究に明け暮れ、鈴羽の想いを見て見ないふりをした。彼女にとってそれがどれだけ酷であったのか。この1年の彼女の変化を見て、俺は自分がどれだけ酷い仕打ちをしていたのか悟った。
 そしてそれは、俺自身の変化ももたらしたようだ。
 今はこの横顔が何より愛おしく。この穏やかに流れる日常を守りたく。新しく生まれてくる命の感動に満ち溢れていた。俺は鈴羽の耳に入るかどうかわからないほど小さな声で呟いた。

「ああ、これもシュタインズゲートの選択だな……」


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