過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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238: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:20:28.51 ID:0whGTSNro
「はい、集中して。無駄口叩いてると催眠状態に移行できないわよ」

 紅莉栖に窘められ、俺は仕方なく指示に従う。
 ゆったりとした、人を落ち着かせるような口調の声が病室内に静かに響いている。
 はじめは外の雑音──車の音や人の会話、鳥の鳴き声も耳に入ってきて気になっていたが、やがてそれらは綺麗さっぱり消え、ついには紅莉栖の声だけが俺の脳内に鳴り響くようになった。
以下略



239: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:22:31.83 ID:0whGTSNro
──覚えていないの?

「…………ああ」

──じゃあ、鈴羽が帰った後のこと思い出して。
以下略



240: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:23:52.67 ID:0whGTSNro

──落ち着いて!

 銃を構え──

以下略



241: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:25:56.23 ID:0whGTSNro

 気がつけば紅莉栖が俺の体を揺さぶり、催眠状態から抜け出すための処置をしてくれていた。
 俺は呼吸を異常に乱し、汗と唾液にまみれ、涙を垂れ流している。だがそれ以上に俺の心はかき乱されていた。
 
──思い出してしまったから。
以下略



242: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:27:38.65 ID:0whGTSNro
 
 そして治療が行われてから1週間。俺は自分が思い出せるであろう全ての記憶を取り戻した。初めに思い出したまゆりの死の記憶に比べれば、後々の治療は幾分穏やかに進んだものだった。
 しかし、俺が思い出した記憶の中に、鈴羽に関わるある事実。それが俺を苛ました。
 鈴羽はダルの娘であり、IBN5100を俺に託すために2036年から跳躍してきたタイムトラベラー。
 どう足掻いてもIBN5100を手に入れる手立てを見いだせなかった俺たちが取った手段──
以下略



243: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:29:53.53 ID:0whGTSNro

 俺や鈴羽、紅莉栖は恐らく再構築され、存在はなかったことになる。もちろん、新しく生まれてくる俺たちの子供も。
 あの時──IBN5100を購入するための資金がたまり、満を持して購入に踏み切ってすぐのこと──紅莉栖の様子がおかしくなったのは、恐らくその事実に気づいたからであろう。
 最初のDメールを消してα世界線からβ世界線に跳躍するということは、つまり紅莉栖が刺殺された世界線に戻るということだ。35年後とは言え、自分の存在を消すために生き続けるというのはどういう気持ちだったのだろう。
 そんな罪を背負わせないためにも、紅莉栖は俺たちの記憶を戻すことを拒んだのだ。たとえ変わった先の世界で、存在を消されたとしても。
以下略



244: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:32:12.76 ID:0whGTSNro



 俺はすでに日本に帰国していた。家にはまだ帰っていない。鈴羽にも一度も顔を見せていなかった。
 どんな顔を見せればいいというのだ。
以下略



245: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:34:01.79 ID:0whGTSNro
「…………」

 来訪者は少しためらうような息遣いをして、やがて意を決したように口を開いた。

「久しぶり、だね」
以下略



246: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:35:05.58 ID:0whGTSNro
「何かあったの? 紅莉栖と……」

「別に、なにも……」

 とっさに否定する。
以下略



247: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:36:26.45 ID:0whGTSNro
「……はろー」

 ドアが開けられると同時に、おそるおそる、と言った様子で挨拶を口にする紅莉栖が姿を見せた。
 鈴羽ではなかったのか。だが、誰が来ても相手をしたくはなかった。今はただ1人になりたかった。

以下略



248: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:37:34.42 ID:0whGTSNro
「確かに、あんたと鈴羽が作り上げる未来は、本来の目的を達成するのであれば絶対に選んではいけない未来だった。でもね、いくら使命のために生きてるからといって、人間が享受すべき幸せを放棄してまで使命に縛られるべきなのかな」

「何が言いたい……」

「人としての幸せを手に入れたいがために、こうなったこと責めなくていいと思うってことよ」
以下略



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