過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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241: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:25:56.23 ID:0whGTSNro

 気がつけば紅莉栖が俺の体を揺さぶり、催眠状態から抜け出すための処置をしてくれていた。
 俺は呼吸を異常に乱し、汗と唾液にまみれ、涙を垂れ流している。だがそれ以上に俺の心はかき乱されていた。
 
──思い出してしまったから。
以下略



242: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:27:38.65 ID:0whGTSNro
 
 そして治療が行われてから1週間。俺は自分が思い出せるであろう全ての記憶を取り戻した。初めに思い出したまゆりの死の記憶に比べれば、後々の治療は幾分穏やかに進んだものだった。
 しかし、俺が思い出した記憶の中に、鈴羽に関わるある事実。それが俺を苛ました。
 鈴羽はダルの娘であり、IBN5100を俺に託すために2036年から跳躍してきたタイムトラベラー。
 どう足掻いてもIBN5100を手に入れる手立てを見いだせなかった俺たちが取った手段──
以下略



243: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:29:53.53 ID:0whGTSNro

 俺や鈴羽、紅莉栖は恐らく再構築され、存在はなかったことになる。もちろん、新しく生まれてくる俺たちの子供も。
 あの時──IBN5100を購入するための資金がたまり、満を持して購入に踏み切ってすぐのこと──紅莉栖の様子がおかしくなったのは、恐らくその事実に気づいたからであろう。
 最初のDメールを消してα世界線からβ世界線に跳躍するということは、つまり紅莉栖が刺殺された世界線に戻るということだ。35年後とは言え、自分の存在を消すために生き続けるというのはどういう気持ちだったのだろう。
 そんな罪を背負わせないためにも、紅莉栖は俺たちの記憶を戻すことを拒んだのだ。たとえ変わった先の世界で、存在を消されたとしても。
以下略



244: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:32:12.76 ID:0whGTSNro



 俺はすでに日本に帰国していた。家にはまだ帰っていない。鈴羽にも一度も顔を見せていなかった。
 どんな顔を見せればいいというのだ。
以下略



245: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:34:01.79 ID:0whGTSNro
「…………」

 来訪者は少しためらうような息遣いをして、やがて意を決したように口を開いた。

「久しぶり、だね」
以下略



246: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:35:05.58 ID:0whGTSNro
「何かあったの? 紅莉栖と……」

「別に、なにも……」

 とっさに否定する。
以下略



247: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:36:26.45 ID:0whGTSNro
「……はろー」

 ドアが開けられると同時に、おそるおそる、と言った様子で挨拶を口にする紅莉栖が姿を見せた。
 鈴羽ではなかったのか。だが、誰が来ても相手をしたくはなかった。今はただ1人になりたかった。

以下略



248: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:37:34.42 ID:0whGTSNro
「確かに、あんたと鈴羽が作り上げる未来は、本来の目的を達成するのであれば絶対に選んではいけない未来だった。でもね、いくら使命のために生きてるからといって、人間が享受すべき幸せを放棄してまで使命に縛られるべきなのかな」

「何が言いたい……」

「人としての幸せを手に入れたいがために、こうなったこと責めなくていいと思うってことよ」
以下略



249: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:38:29.47 ID:0whGTSNro
「人だって、変わるわ。私もこの10年、色々考えることはあったから……」

「話が見えてこんな。こんな話をするためにわざわざ日本に来たのか? ご苦労なことだな」

 こんな事態になったにもかかわらず平然としている目の前の女にいらつきを隠せず、おもいっきり皮肉を口にする。だが紅莉栖は動じない。俺の文句には反応せず切り出してきた。
以下略



250: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:40:37.94 ID:0whGTSNro
「1つは、従来の目的通り、IBN5100を使って2010年7月23日にエシュロンに捕らえられた最初のDメールを消す。その場合、タイムトラベルした私達はきっと再構成される。β世界線に戻れば、私は7月28日に何者かに刺されて死ぬ。鈴羽は再構成されて、数年後に生まれてくる。生まれるかどうかも確定してないけれど。あんたについては、世界がどういう判断を下すかわからないわね。矛盾がないように再構成されて、今のあんたの意識は身体とともに存在しなくなるかもしれない。2010年において存在してるもう1人のあんたに上書きされるかもしれない」

 どの道、多くを失うのは確定している。紅莉栖の死も世界線の収束によって不可避だろう。タイムリープマシンは存在せず、Dメールを使えば再びα世界線に戻ってしまう可能性が高い。
 どうしようもない絶望の世界線だ。

以下略



251: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:42:25.96 ID:0whGTSNro
 紅莉栖はそう言って、口をごもった。その先を言うのを躊躇っているようだ。
 代わりに俺がその言葉を補う。

「2000年問題を意図的に起こすというのか? だがそれも現実的とは言いがたいぞ」

以下略



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